空き家 売却 税金 計算|取得費が不明な場合

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親から相続した築40年の空き家を売ることにしたものの、家中を探しても購入当時の売買契約書が出てこない。いくらで買った家なのか、もう誰も覚えていない。そんなときに「取得費が分からないと税金が高くなる」と聞いて、手取りがどれだけ減るのか不安になっている、という方に向けた記事です。

先に結論を言い切ります。空き家売却の税金計算は「売った金額(収入金額) − 取得費 − 譲渡費用」で求めた譲渡所得(売却で得た利益)に税率をかけて決まり、この取得費を証明できるかどうかで税額が大きく変わります。契約書が見つからないと、売った金額の5%を取得費とみなす「概算取得費」で計算することになり、差し引ける金額が小さくなる分だけ課税対象が跳ね上がります。だからこそ、まずは契約書やその手がかりを本気で探す価値があります。

空き家の売却税金は「取得費が分かるか」で計算が変わる

国税庁の説明では、譲渡所得の金額は「土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算」します。取得費は買ったときの代金など、譲渡費用は売るためにかかった費用(仲介手数料など)を指します。特別控除が使える場合は、そこからさらに差し引きます。

税率は所有期間で二段階に分かれます。売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得、5年以下なら短期譲渡所得です。長期は所得税15%・住民税5%に復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が加わり、合計20.315%(=15%+15%×2.1%+5%)になります。短期は所得税30%・住民税9%に復興特別所得税2.1%分が加わり、合計39.63%です。相続した空き家は、被相続人(親など)が取得した日をそのまま引き継いで所有期間を数えるため、多くの場合は長期側で計算します。

ここで問題になるのが取得費です。契約書があって購入代金が分かればそれを使えますが、分からないときは「売った金額の5%相当額を取得費とすることができます」という概算取得費のルールが使えます。国税庁の例では、3,000万円で売却した場合の概算取得費は150万円です。つまり実際にはもっと高く買っていたとしても、証明できなければ差し引けるのは売値のわずか5%になり、残りがほぼ丸ごと課税対象になってしまうという構造です。

契約書ありとなしで税額はどれだけ違うか(計算例)

取得費が判明している場合と、契約書が無く概算取得費5%で計算する場合とで、税額がどれだけ動くかを並べます。以下はすべて仮定値による試算で、実際の税額を保証するものではありません。長期譲渡所得(所有期間5年超)として計算し、特別控除は考慮していません。

項目 契約書あり(取得費が判明) 契約書なし(概算取得費5%)
売った金額 3,000万円 3,000万円
取得費 2,000万円(契約書で判明・仮定) 150万円(3,000万円×5%)
譲渡費用 120万円(仲介手数料など・仮定) 120万円(仮定)
譲渡所得 880万円 2,730万円
税額(長期20.315%) 約179万円 約555万円

取得費が2,000万円分かっている場合と、5%の150万円しか差し引けない場合とでは、この仮定でも譲渡所得の差が1,850万円、税額の差はおよそ376万円になります。古い家ほど契約書が残っておらず、この差がそのまま手取りの差になって表れます。だからこそ「たかが紙一枚」と諦めずに探す価値があるわけです。

試算をするには、まず現実的な売却見込み額を把握しておくとイメージがつかみやすくなります。複数の会社にまとめて査定を依頼して相場感をつかむ方法があります。

取得費に含められる費用・含められない費用の考え方

古い領収書や資料を整理する手元。
実家の古い資料を確認する(イメージ)

「土地取得価格にいれる費用・入れない費用の条件」を知りたい方も多いテーマです。取得費は購入代金そのものだけではなく、その資産を買ったときにかかった一定の付随費用を加えられます。反対に、後からかけた費用の中には取得費に入れられないものもあります。どの費用が取得費に含められ、どれが含められないかは国税庁が区分を定めており、その具体的な線引き(登録免許税や仲介手数料などの扱い)は次の資料で確認します。

実務上の要点は二つです。第一に、実際にかかった費用(実額)で取得費を計算するには、それを裏づける資料が要ります。第二に、実額が概算取得費(売値の5%)を下回るような場合は、あえて概算取得費で計算するほうが有利になることもあります。実額と概算のどちらで計算するかは選べる場面があるため、資料が集まった段階で両方を比べるのが安全です。判断に迷う費用があるときは、税理士(税務の専門家)や税務署に確認してください。

売買契約書が見つからないときに探す場所

相続した空き家では、購入代金は親(被相続人)が買ったときの金額を引き継ぎます。つまり探すべきは、あなたの手元の書類ではなく、親が家や土地を買った当時の記録です。次のような場所と書類が手がかりになります。

  • 権利証・重要書類の保管場所。実家の金庫、仏壇の引き出し、タンスの奥、貸金庫などに、売買契約書や重要事項説明書が一緒に保管されていることがあります。
  • 登記簿(登記事項証明書)。法務局で取得できます。購入時に住宅ローンを組んでいれば抵当権(借入の担保)の設定額が記録されており、当時いくら借りたかの手がかりになります。
  • 預金通帳・振込の記録。購入代金や手付金を支払った当時の通帳が残っていれば、支払額と支払先が分かります。古い通帳や取引履歴を金融機関に照会できる場合もあります。
  • 住宅ローンの書類。金銭消費貸借契約書(ローン契約書)、返済予定表、ローン残高証明書などに借入額が記されています。
  • 分譲時のパンフレット・価格表。新築分譲で買った家なら、当時の価格表やチラシが購入価格の裏づけになることがあります。
  • 建築請負契約書。土地を買って家を建てた場合は、建物の建築費が別の契約書に残っています。
  • 仲介した不動産会社の記録。購入時に仲介した会社が営業していれば、取引記録が残っている可能性があります。

注意したいのは、抵当権の設定額やローンの記録は「いくら借りたか」であって「いくらで買ったか」とは一致しないことがある点です。これらはあくまで手がかりであり、そのまま取得費として認められるかどうかは別の判断になります。実際の売買契約書が最も確実なので、まずはそれを探し、見つからない場合の代替資料については税務署や税理士に扱いを確認するのが安全です。

契約書が出てこないときの進め方(判断フロー)

古い書類や通帳を整理する手元
失われた資料を探す様子(イメージ)

手がかりを探しても契約書が確定できないとき、どう進めるかを条件ごとに整理します。

  1. 売買契約書が見つかったときは、記載の購入代金を基に実額で取得費を計算します。付随費用の資料もあわせて集めます。
  2. 契約書は無いが、通帳・ローン書類などで購入額を合理的に説明できそうなときは、それらを資料としてまとめたうえで、実額として使えるかを税理士・税務署に確認します。
  3. どうしても購入額を裏づけられないときは、概算取得費(売値の5%)で計算します。これは「できる」規定なので、資料が無くても申告自体は進められます。
  4. 実額より5%のほうが大きくなるときは、概算取得費を選んだほうが有利です。両方を試算して比べます。

あわせて、相続した空き家では一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特別控除が使える場合があり、これが適用されれば取得費が不明でも結果的に税負担が抑えられることがあります。ただし要件は細かく、適用には確定申告が必要です。売り方ごとの手取りや期間の違いをふまえて全体の流れを確認したい場合は、空き家 売却の進め方(仲介と買取の比較)もあわせてご覧ください。

よくある質問

売買契約書がどうしても見つからないと、必ず取得費は5%になりますか

概算取得費(売値の5%)は「取得費とすることができる」という規定で、契約書が無いときの選択肢です。通帳やローンの記録など客観的な資料で購入額を合理的に説明できる場合は、実額での計算が認められることもあります。扱いに迷うときは税務署や税理士に相談してください。

相続した空き家の取得費は、親が買ったときの金額で考えるのですか

はい。相続で取得した土地・建物は、被相続人(親など)の取得日を引き継いで所有期間を数えます。取得費も、親が買ったときの代金が基礎になるため、探すべきは親が購入した当時の契約書や支払い記録です。

実際の取得費と概算取得費は、有利なほうを選べますか

実額を裏づける資料がそろっていれば実額で計算できますが、資料が無い場合や、実額が売値の5%を下回る場合は概算取得費のほうが有利になることがあります。両方を試算して比べるのが安全です。

住宅ローンの借入額や抵当権の設定額で取得費を証明できますか

これらは購入額を推測する手がかりにはなりますが、「借りた額」と「買った額」は一致しないことがあり、そのまま取得費として認められるとは限りません。使えるかどうかは税務署・税理士に確認してください。

3,000万円の特別控除が使えれば、取得費が不明でも税金はかかりませんか

特別控除で譲渡所得が差し引ききれれば、結果的に税負担が生じないこともあります。ただし相続した空き家の特別控除は建物の建築年や利用状況などの要件が細かく、適用には確定申告が必要です。取得費が不明かどうかとは別に、要件を一つずつ確認してください。

取得費が分からないまま確定申告はできますか

概算取得費(売値の5%)で計算して申告する方法があります。申告の前に契約書や手がかり資料を探し、実額と概算のどちらが有利かを比べたうえで、必要書類とともに提出します。

参考・出典

  • 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき(概算取得費) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
  • 国税庁 No.3252 取得費となるもの https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm
  • 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(総合譲渡・分離譲渡) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
  • 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
  • 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
  • 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
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