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相続した実家が古く、建物のままでは買い手がつかないため、更地にして土地として売ろうとしている。解体の見積りは100万円を超えていて、この費用が売却の税金を計算するときに差し引けるのかどうかが気になっている。こうした場面で迷いやすいのが、解体費が譲渡所得(不動産を売って得た利益にかかる税金の対象)の計算で「譲渡費用」として引けるのか、それとも引けないのか、という点です。
結論から言うと、分かれ目は「その土地を売るために壊したのかどうか」です。売るために更地にしたと認められれば譲渡費用に含められる可能性がありますが、個々の状況によって判断が割れやすい論点でもあります。金額が大きく税額への影響も大きいため、可否を自分で断定せず、税務署または税理士に確認する項目として整理しておくのが安全です。以下では、なぜ扱い次第で税額が変わるのか、どこで線が引かれるのか、自分が壊す場合と買主が壊す場合で何が違うのかを順に見ていきます。
解体費が税額を左右する仕組み

不動産を売ったときの税金は、売った金額そのものにかかるのではなく、利益(譲渡所得)にかかります。国税庁の説明では、譲渡所得の金額は「土地や建物を売った金額(収入金額)から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します」とされています。式にすると次のとおりです。
譲渡所得 = 収入金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
ここで解体費が「譲渡費用」に入るかどうかで、差し引ける金額が変わり、結果として課税される利益(課税譲渡所得)が変わります。税率は所有期間で異なり、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超える長期は所得税15%・住民税5%(これに復興特別所得税として基準所得税額の2.1%が加わり、合計20.315%=計算値)、5年以下の短期は所得税30%・住民税9%(同じく復興特別所得税2.1%で合計39.63%=計算値)です。相続した空き家は被相続人(亡くなった方)の取得日を引き継ぐため、多くは長期になります。
解体費が引けるか引けないかの明細例
数字で見ると差がはっきりします。取得費が分からない古い家では、売った金額の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使えます。仮に土地を1,000万円で売り、取得費が不明なケースで明細を組むと次のようになります。解体費はここでは仮に100万円としています(解体費の全国平均は公的統計が無く、構造・延床面積・立地・残置物で大きく変わるため、実額は複数の見積りで確認してください)。
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 収入金額(売却代金) | 1,000万円 | 土地として売却 |
| 取得費(概算・5%) | 50万円 | 取得費不明のため概算 |
| 仲介手数料(上限) | 39.6万円 | 区分計算による上限(税込) |
| 印紙税 | 5千円 | 500万円超1,000万円以下(軽減後) |
| 解体費(仮) | 100万円 | 譲渡費用に入るかが争点 |
広告この記事の結論:解体工事110番
解体費用が譲渡費用に入るかどうかの線引きは自己判断が難しいため、まず解体費用の見積もりを取って税務署への確認材料にする方法もあります。
広告です。対応エリアと条件は公式でご確認ください。
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解体費100万円が譲渡費用に含められる場合、課税譲渡所得はおよそ809.9万円になります。含められない場合は909.9万円で、差は100万円です。長期(20.315%)だとすると、この100万円が引けるかどうかで税額は約20万3千円変わります。短期(39.63%)ならおよそ39万6千円の差です。壊すか壊さないかではなく、壊した費用をどこに置くかだけで、これだけの開きが出ます。
「売るために壊したか」で扱いが分かれる線引き
譲渡費用とは、大まかには資産を譲渡するために直接かかった費用を指します。土地の上にある建物を取り壊して土地を売る場合の解体費の取扱いは、国税庁の「譲渡費用となるもの」(No.3255)に定めがあります。ただし本記事の作成時点では、この原文の該当箇所を確認した数値・文言を確定できていないため、ここでは考え方の枠組みだけを示します。実際の可否は必ず一次資料か税務署でご確認ください。
判断フロー(条件から結論を絞る)
- 土地として売る前提で、売買に向けて更地にした:解体が「売るために直接かかった費用」と言えるか。譲渡費用に含められる可能性がある一方、契約や解体の時期・目的の説明が問われるため確認が要る。
- もともと住むつもりで解体・建替えを検討していて、途中で方針が変わって売った:売却のための費用とは言い切りにくく、扱いが変わりうる。
- 建物にまだ取得費(未償却の残額)が残っている:解体費だけでなく、取り壊した建物の取得費部分をどう扱うかも論点になる。
このように、同じ「解体して土地を売る」でも、目的・時期・建物の帳簿上の価値によって結論が動きます。判断が分かれるところなので、可否を自分で決め打ちせず、次章のチェックリストにそって税務署または税理士に確認する形が安全です。
自分が壊すか、買主が壊すか

もう一つの大きな分かれ目が、解体を誰がやるかです。売主が自分の費用で更地にしてから引き渡す場合と、建物が建ったまま売って買主が壊す場合とでは、費用を負担する人が違うため税務上の扱いも変わります。
買主が取り壊す契約であれば、解体費は買主が負担するもので、売主の譲渡費用には基本的に入りません。その代わり、売主は解体費を持ち出さずに済むという別の損得が生まれます。手取りで比べるなら、更地にして売る前提で得られる売値と、建物付きで売る売値のどちらが解体費を差し引いても有利かを並べて考えることになります。仲介と買取で手取りや期間がどう変わるかは〈空き家 売却の進め方〉で整理しています。
建物が古く再建築不可や残置物ありといった事情があると、更地にしても買い手が限られる土地は少なくありません。壊す前に、建物付きのまま買い取ってくれる業者に当たってみて、解体費を自分で払う場合と比べるのも一つの手です。
空き家3,000万円控除と解体の関係
相続した空き家を売るときは、譲渡費用の話とは別に、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特別控除」(No.3306)が使えることがあります。解体との関係で押さえておきたい点を挙げます。
- 対象は、相続または遺贈で取得した被相続人居住用の家屋・敷地を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売り、一定の要件に当てはまる場合。相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることが条件です。
- 家屋の要件は、昭和56年5月31日以前の建築であること、区分所有建物登記がされた建物でないこと、相続の直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと。
- 令和6年1月1日以後の譲渡では、家屋を売る場合に「譲渡の時から翌年2月15日までに一定の耐震基準を満たすこと」または「家屋の全部の取壊し等を行ったこと」でも要件を満たせるようになりました。買主が引渡し後に耐震改修や取壊しをするケースも認められています。
- 相続人が3人以上のときは、令和6年1月1日以後の譲渡について控除額が2,000万円までに下がります。
- 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例(No.3267)とは併用できず、どちらかを選びます。適用には確定申告と、市区町村長が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」などの添付が必要です。
この特別控除が3,000万円まで使えるケースでは、解体費が譲渡費用に入るかどうかの差(先の例で約20万円)よりも、控除を受けられるかどうかのほうが税額への影響がはるかに大きくなります。解体の段取りを決める前に、まず特別控除の要件を満たせるかを確かめるのが順序として有効です。
税務署に確認しておく項目

解体費の扱いは状況で割れるため、壊す前に次の点をまとめて税務署または税理士に確認しておくと、後から「引けなかった」という取りこぼしを防げます。
- この解体を「土地を売るために行った費用」として譲渡費用に含められるか(売買契約や解体の時期・目的の説明も含めて)
- 取り壊した建物に取得費(未償却の残額)が残っている場合、その部分の扱い
- 自分で更地にしてから売るのと、買主が壊す前提で売るのとで、税務上どちらが有利か
- 空き家の3,000万円特別控除の要件を満たすか、満たすなら解体のタイミングをいつにすべきか
- 取得費加算の特例と特別控除のどちらを選ぶか
- 受けた解体補助金がある場合、収入や取得費・費用の計算にどう反映するか
金額の大きい判断ほど、確定申告の直前ではなく、解体や契約を動かす前に確認しておくと選べる道が広く残ります。
よくある質問
解体費は必ず譲渡費用として引けますか
必ず引けるとは言い切れません。土地を売るために壊したと認められるかどうかで扱いが変わり、個々の状況で判断が分かれます。可否を自分で断定せず、税務署または税理士に確認してください。
取得費が分からない古い家でも解体費は関係しますか
関係します。取得費が不明なときは売った金額の5%を概算取得費として使えますが、それとは別に解体費が譲渡費用に入るかどうかで課税される利益が変わります。取得費と譲渡費用は別の項目として計算します。
買主が解体する場合、私の税金は安くなりますか
買主が壊す契約なら解体費は買主負担になり、売主の譲渡費用には基本的に入りません。その分の持ち出しがなくなる一方、譲渡費用として引ける解体費もなくなります。建物付きの売値と、更地にした売値から解体費を引いた額を並べて、手取りで比べて判断してください。
空き家特例(3,000万円控除)と解体費の控除は両方使えますか
空き家の3,000万円特別控除は譲渡所得から控除する制度で、解体費が譲渡費用に入るかどうかとは別の話です。両者は排他ではありませんが、特別控除は取得費加算の特例とは併用できません。要件と選び方を確認したうえで進めてください。
解体補助金を受けた場合、税金の計算はどうなりますか
補助金の性質によって、収入や費用の計算への反映のしかたが変わることがあります。本記事の作成時点では取扱いを確定できていないため、受給した補助金の名称・要綱とあわせて税務署に確認してください。
短期と長期で解体費の効き方は変わりますか
引ける金額そのものは同じでも、税率が違うため税額への効き方は変わります。長期(20.315%=計算値)より短期(39.63%=計算値)のほうが税率が高いぶん、同じ解体費が引けるかどうかの税額差も大きくなります。相続した空き家は被相続人の取得日を引き継ぐため、多くは長期になります。
参考・出典
- 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(総合譲渡以外の場合) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
- 国税庁 No.3255 譲渡費用となるもの https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm
- 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
- 国税庁 No.7108 不動産の譲渡・消費貸借等に関する契約書の印紙税の軽減措置 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
- 国土交通省 宅地建物取引業者が受けることができる報酬の額(告示・消費者向けお知らせ) https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000013.html

