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親が亡くなり、誰も住まなくなった実家を相続した。相続税の申告書に「土地の価額」を書く欄があるものの、固定資産税の通知に載っている額を写せばいいのか、近所の売り出し価格を参考にすればいいのか、それとも別の出し方があるのか分からない。こうした場面で最初につまずくのが、土地の評価額の考え方です。
結論から言うと、相続税で使う土地の評価額は、実際に売れる値段(売買価格)とも、固定資産税の通知に載っている評価額とも別の基準で計算します。市街地の宅地なら「路線価方式(前面道路に付けられた1平方メートルあたりの価額をもとに計算する方法)」で、路線価が付いていない地域なら「倍率方式」で出すのが基本です。この記事では、評価額を出す順番の骨格と、売るときにかかる税金との違いに絞って整理します。相続税の申告そのものは要件が細かいため、金額の確定や特例の可否は税理士や税務署で確認することを前提にお読みください。
相続税の「土地評価額」は3つの価格のどれとも違う

土地には用途ごとに複数の「価格」があります。これらを混同すると、申告額を大きく間違えるもとになります。相続税で使うのは、このうち「路線価をもとにした評価額(相続税評価額)」です。
| 価格の種類 | 主な用途 | 調べ先 |
|---|---|---|
| 時価(実勢価格) | 実際に売買するときの目安 | 成約事例・不動産会社の査定 |
| 公示地価・基準地価 | 土地取引の指標 | 国土交通省の公表資料 |
| 路線価(相続税評価額の基) | 相続税・贈与税の計算 | 国税庁「路線価図・評価倍率表」 |
| 固定資産税評価額 | 固定資産税、登録免許税、倍率方式の基 | 市区町村(固定資産税の課税明細書) |
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相続税評価額と売却価格は別物のため、実際に売るといくらになるかは、その場でわかる査定額で確認する方法もあります。
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相続税の評価額と売買価格が一致しないのは、価格の目的が違うためです。売買価格は買い手との交渉で決まりますが、相続税の評価額は全国で同じルールに沿って機械的に計算できるよう、路線価や倍率という共通の基準が用意されています。「相続税の評価額が低い=損」でも「高い=得」でもなく、あくまで税額を計算するための土地の値付けだと捉えてください。
路線価方式で評価額を出す順番(路線価×地積×補正)
市街地の宅地は、原則として路線価方式で評価します。骨格はシンプルで、「その土地が面している道路の路線価」に「地積(土地の面積)」を掛け、そこへ土地の形状などに応じた「補正」を掛ける、という順番です。
評価額 = 路線価(1平方メートルあたり) × 地積(平方メートル) × 各種の補正率
1. 国税庁のサイトで自分の土地の路線価を調べる
路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で公表されており、道路ごとに1平方メートルあたりの価額が示されています。相続税では、相続が起きた年に公表された路線価図を使うのが原則です。路線価図には単位や記号の決まりがあり、その読み方は国税庁の説明に沿って確認する必要があります。
2. 地積を確定して掛ける
地積は登記簿(登記事項証明書)や測量図で確認します。実際の面積が登記と食い違うことがあるため、正確な評価には現況の地積が必要です。前面道路の路線価に地積を掛けた額が、補正前の大まかな評価額になります。
3. 土地の形状・条件に応じて補正する
同じ路線価・同じ面積でも、間口が狭い、奥行が極端に長い、形がいびつ(不整形地)、二つの道路に面している、といった条件で使い勝手が変わります。これを反映するため、路線価方式では奥行や間口、形状などに応じた補正率を掛けて調整します。補正率は国税庁の財産評価基本通達(宅地の評価に関する定め)の付表として定められており、土地ごとに当てはめる表が変わります。
例えば、仮に路線価が1平方メートルあたり15万円、地積が150平方メートル、補正が不要な整形地だとすると、評価額は15万円×150=2,250万円という計算になります。ここで使った15万円はあくまで計算の流れを示すための仮の数字で、実際の路線価は必ず自分の土地の路線価図で読み取ってください。補正が必要な土地では、この額にさらに補正率を掛けて調整します。不整形地や複数の道路に面する土地は補正の判断が難しく、評価額が数百万円単位で動くこともあるため、専門家に確認するのが安全です。
路線価が付いていない土地は「倍率方式」

すべての土地に路線価が付いているわけではありません。郊外や田畑が多い地域では路線価が設定されておらず、こうした土地は「倍率方式」で評価します。倍率方式では、市区町村が定めた固定資産税評価額に、地域ごとに国税庁が公表する評価倍率を掛けて評価額を出します。
評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率
固定資産税評価額は、毎年届く固定資産税の課税明細書や、市区町村で取れる評価証明書で確認できます。倍率は評価倍率表で地域ごとに定められているため、自分の土地の所在地の倍率を調べて掛けます。
相続税の評価額と、売るときにかかる税金は計算が別
ここが最も誤解の多いところです。相続税の土地評価額は「相続税を計算するための値付け」であり、その空き家を売ったときにかかる税金(譲渡所得税・住民税)とは、計算のもとが別です。
| 場面 | 何を計算するか | 計算のもと |
|---|---|---|
| 相続したとき(相続税) | 土地の評価額 | 路線価方式または倍率方式 |
| 売ったとき(譲渡所得税・住民税) | 譲渡所得(もうけ) | 売った金額 − 取得費 − 譲渡費用(−特別控除) |
譲渡所得は「売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算する」もので、相続税評価額をそのまま使うわけではありません(国税庁 No.3202)。取得費が分からないときは、売った金額の5パーセント相当額を取得費とする概算取得費を使えます(同 No.3258。例えば3,000万円で売却したなら150万円)。
また、相続税を納めた人がその財産を一定期間内に売った場合、納めた相続税額の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」があります。相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡することが条件です(同 No.3267)。相続した空き家を売る場合は、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例もありますが、この空き家特例と取得費加算はどちらか一方しか使えません(同 No.3306。併用不可)。相続後に空き家を実際にどう売るか、仲介と買取で手取りや期間がどう変わるかは、空き家 売却の進め方で整理しています。
空き家を相続したときに評価額でつまずかない進め方

相続税がかかるかどうかは、土地の評価額だけでなく、基礎控除や他の財産、小規模宅地等の特例など複数の要素で決まります。空き家サイトの立場では相続税の申告そのものには深入りしませんが、土地の評価で迷わないための順番だけ示します。
評価の入口を決める判断フロー
- 土地の所在地を国税庁の路線価図で確認する → 路線価が付いていれば路線価方式(路線価×地積×補正)。
- 路線価図に路線価が無い地域 → 倍率方式(固定資産税評価額×評価倍率)。固定資産税の課税明細書を用意する。
- 土地の形がいびつ、間口が狭い、複数の道路に面している → 補正の判断が必要。自己流で確定させず、税理士に評価を依頼する。
- 相続税の申告が必要かどうか、小規模宅地等の特例が使えるかどうかは、相続税の専門領域として税理士・税務署で確認する。
相続登記(不動産の名義を相続人に変える手続き)は令和6年4月1日から義務化されており、取得を知った日から3年以内の申請が求められます。登記の際の登録免許税は固定資産税評価額×0.4%で計算します(国税庁 No.7191)。空き家は評価額を確定して申告や登記を済ませたうえで、活用するか売るかを決める流れになります。売却まで見据えるなら、名義を整えた段階で査定を取り、手元にいくら残るかを試算しておくと判断が早くなります。
よくある質問
相続税の土地評価額は、固定資産税の通知に載っている額でいいですか
いいえ、原則として別です。市街地の宅地は路線価方式で計算し、路線価が無い地域だけ固定資産税評価額に倍率を掛ける倍率方式を使います。固定資産税評価額をそのまま相続税の評価額として使えるのは倍率方式の場合に限られます。
どの年の路線価を使えばよいですか
相続が発生した年に公表された路線価図を使うのが原則です。路線価図は年ごとに更新されるため、亡くなった年の版を確認してください。過去分や当年分の路線価図は国税庁のサイトで公開されています。
路線価と実際に売れる値段が違うのはなぜですか
路線価は相続税・贈与税の計算のために全国共通の基準で付けられた価額で、公示地価より低めに設定される傾向があります。一方、売買価格は買い手との交渉や物件の状態で決まります。目的が異なるため一致しないのが通常です。
土地の形がいびつだと評価額はどうなりますか
不整形地や間口が狭い土地は使い勝手が下がるため、補正率を掛けて評価額を調整します。補正の適用は判断が難しく、当てはめる表を誤ると評価額が大きくずれます。形状に難のある土地は税理士に評価を依頼するのが安全です。
相続税の評価額と、売ったときの税金は同じ計算ですか
違います。相続税は路線価方式や倍率方式で出した評価額をもとに計算します。売ったときの譲渡所得は「売った金額−取得費−譲渡費用」で計算し、相続した土地の取得費や所有期間は亡くなった方から引き継ぎます。相続時と売却時で税金の計算は別々に行います。
評価額の計算は自分でやっても大丈夫ですか
整形地で補正が不要な土地なら流れは追えますが、相続税の申告は基礎控除や小規模宅地等の特例など評価額以外の要素も絡みます。補正が必要な土地や申告の要否を含め、金額を確定する場面では税理士に相談することをおすすめします。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3202「譲渡所得の計算のしかた」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3258「取得費が分からないとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表(相続登記)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 法務省「不動産登記法の改正(相続登記の申請義務化)」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html

