空き家 デメリット|持ち続けた時に積む負担

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相続した実家を「急いで決めなくてもいい、とりあえず空き家のまま持っておこう」と判断した数年後に、固定資産税の納税通知書や管理業者の請求を見て「思ったよりお金が出ていっている」と気づく人は少なくありません。空き家は住んでいなくても毎年一定の費用が発生し、その額は物件を使っている間はほとんど意識に上りません。持ち続けることのデメリットは、事故や罰則のような大きな一撃よりも、少額の費用が毎年静かに積み上がる形で表れます。

判断の基準はシンプルです。持ち続けるためにかかるお金を「年額」で洗い出し、5年分の総額を出したうえで、売却や活用で手元に入る額と並べて比べます。「もったいない」「いつか使うかも」という感覚ではなく、年間いくら・5年でいくら出ていくかという数字で見ると、持ち続ける・手放すの判断がぶれにくくなります。この記事では、その積み上げの枠組みと、金額を自分で書き込める表を用意しました。

空き家のデメリットは毎年出ていくお金に集約される

空き家を持ち続けるときにかかる費用は、大きく次の5種類に分けられます。いずれも「住んでいないから0円」にはならない点が共通しています。

  • 固定資産税・都市計画税:住んでいなくても所有している限り毎年課税されます。
  • 火災保険料:建物がある限り火災・風水害のリスクは残りますが、空き家は加入自体が難しいという別の問題があります。
  • 管理費用:換気・通水・郵便物の確認などを自分で行えない場合、管理代行の月額がかかります。
  • 草刈り・庭木の手入れ:放置すると近隣トラブルや管理不全の指摘につながるため、年に数回の作業費が発生します。
  • 電気・水道・ガスの基本料金:契約を残したままにすると、使わなくても毎月の基本料金が引かれ続けます。

このうち固定資産税は法令で率が決まっていますが、管理・草刈り・保険・ライフラインの金額は物件の場所・広さ・契約内容で変わり、全国共通の相場という公的な統計は存在しません。だからこそ「一般論の金額」ではなく、自分の物件の実額を1項目ずつ書き出して合計する作業が要になります。

固定資産税は住んでいなくても毎年かかる

固定資産税は、その年の1月1日時点で不動産を所有している人に課税されます。空き家であっても、更地であっても、所有していれば納税義務は続きます。標準税率は1.4%で、固定資産税=課税標準額(税額計算のもとになる評価額)×1.4%で計算します(総務省。市町村によっては別に都市計画税が加わります)。

たとえば土地と家屋を合わせた課税標準額が仮に400万円だとすると、400万円×1.4%=年5万6,000円が固定資産税の目安になります(これはあくまで計算の仕方を示すための仮の値です。実額はご自身の納税通知書に記載された課税標準額で計算してください)。なお、課税標準額が土地で30万円未満、家屋で20万円未満のときは免税点を下回り課税されませんが(総務省)、都市部の住宅地でこの水準になることはまれです。

注意したいのは、住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」があり、200㎡以下の部分は課税標準が6分の1に軽減されている点です(総務省)。空き家を放置して自治体から「特定空家」や「管理不全空家」として勧告を受けると、この特例が外れて課税標準が元に戻り、土地の税額が最大で6倍近くまで上がることがあります。ただしこれは放置して勧告を受けた場合の話で、空き家にした瞬間に自動で6倍になるわけではありません。勧告と特例が外れる時期の詳しい条件は別の記事で扱います。

管理・草刈り・火災保険は金額が読みにくい三つ

固定資産税と違い、管理・草刈り・保険は物件ごとに金額が動きます。ここでは公式に料金を公表している会社の例を挙げますが、これは「相場」ではなく実在するサービスの料金例です。エリアや面積の条件が付くので、必ず自分の物件で見積もりを取ってください。

管理代行の月額の例

遠方に住んでいて自分で通えない場合は、月1回の巡回を業者に委託することになります。公式料金の例では、NPO法人 空家・空地管理センターの戸建て向け「スタンダードプラン」が月額2,750円(税込・屋外中心・月1回巡回)、換気や通水など屋内作業まで含む「プラス」が月額6,600円(税込)です。ダスキンの定期巡回は月額4,400円(税込・月1回)ですが、対応エリアが兵庫・大阪・奈良・神奈川に限られます(いずれも2026年9月時点・公式サイト確認)。屋内の換気・通水まで頼むかどうかで金額が倍以上変わる点が判断のポイントです。

草刈り・庭木の費用の例

庭や敷地の雑草を放置すると、景観の悪化だけでなく管理不全空家として指摘される要因にもなります。公式料金の例では、ダスキンの雑草対策(薬剤散布)が1回9,900円(税込)で、年3回の実施を想定した案内になっています(2026年9月時点・公式サイト確認)。敷地の広さや作業内容で金額は上下するため、自分の敷地面積で見積もりを取る必要があります。

火災保険は「入れないこと」自体がデメリット

空き家の火災保険は、金額の前に「加入できるか」という壁があります。日新火災は「人が常時居住していない住宅は空家にあたる」とし空家は引受対象外、三井住友海上も火災保険は原則として住居用の建物が対象で、季節利用の別荘や一時的な空家などの例外を除き空家は対象外としています(各社FAQ・2026年9月時点)。一般の住宅用火災保険に入れないと、空き家向けの別枠の保険を探すことになり、選択肢が限られます。加入できる商品でも保険料は上昇傾向で、損害保険料率算出機構は火災保険の参考純率(保険会社が保険料を算出する際のもとになる、保険金に充てる部分の参考値)を全国平均で13.0%引き上げています(2023年公表)。参考純率は保険料そのものではありませんが、住宅の火災保険が値上がりしている流れは空き家にも及びます。

電気・水道・ガスの基本料金は契約を残すと毎月引かれる

ライフラインは、契約を残したまま使わずにいると、使用量が0でも基本料金だけが毎月かかります。公式料金の例を挙げると、電気は中部電力ミライズの従量電灯B(一般家庭向けの標準的な契約)30アンペアで基本料金が月963.42円(税込)、ガスは東京ガスの一般契約で使用量0〜20㎥のとき基本料金が月759.00円(税込)です。水道は東京都23区・口径20mmの場合、水道の基本料金1,170円と下水道の基本額560円を合わせて税抜1,730円、消費税を加えると月およそ1,903円になります(東京都の計算式に基づく試算値・公式ページに1,903円という表記はありません)。いずれも2026年9月時点の各社公式料金で、電力会社・地域ごとに金額は異なります。

使う予定が当分ないなら、契約を止める(使用中止にする)と基本料金はかからなくなります。ただし売却の内見や管理で水道・電気が必要になる場面もあるため、止めるか維持するかは訪問頻度で決めます。再開時には開栓の手続きが必要です。

5年持ち続けるといくらになるか、自分で埋める積み上げ表

ここまでの費用を年額に直し、5年分を合計するのが判断の土台です。次の表の「あなたの年額」の欄に、自分の物件の実額を書き込んでください。「例(年額)」は上で挙げた公式料金や仮の計算をもとにした参考値で、金額を保証するものではありません。地域も事業者も異なる例を並べているため、そのまま合計しても実際の負担とは一致しません。

費用項目 例(年額・参考値) あなたの年額
固定資産税・都市計画税 納税通知書の額(例:5万6,000円) 円
火災保険料 加入できた場合の保険料 円
管理代行(月1回・屋外) 2,750円×12=約3万3,000円 円
草刈り・庭木(年3回) 9,900円×3=2万9,700円 円
電気の基本料金(30A) 963円×12=約1万1,561円 円
水道・下水の基本料金 1,903円×12=約2万2,836円 円
ガスの基本料金 759円×12=約9,108円 円
年額の合計 — 円
5年分(×5) — 円

管理・草刈り・ライフラインの基本料金という「読める費用」だけを上の参考値で合計すると、年およそ10万6,000円になります。これに固定資産税と火災保険料、そして数年に一度は必要になる修繕費が加わります。5年で見れば、読める費用だけでも約53万円、固定資産税や保険を足せば70万円から100万円規模になることも珍しくありません。しかもこの間、建物は傷み続け、売るときの価値は下がっていきます。持ち続ける費用と、資産価値の目減りが同時に進むのが空き家の構造的なデメリットです。

お金以外にも積む負担と、売る・持つの判断フロー

費用のほかにも、放置による近隣トラブル(雑草・害虫・不法投棄)、犯罪や放火の温床になるリスク、そして管理不全と判断された場合の行政指導や過料といった負担があります。これらの罰則・近隣リスクの詳細は別の記事で扱いますが、ここで押さえたいのは「持ち続けるほど負担は減らず、増える方向にしか動かない」という点です。

売るか持ち続けるかは、次の順で考えると整理しやすくなります。

  1. 上の表で自分の年額と5年分の総額を出す。
  2. 近い将来(3〜5年以内)に自分か家族が住む・使う具体的な予定があるかを確認する。予定がなければ持ち続ける根拠は弱まります。
  3. 予定がないなら、今売った場合の手取り額を調べ、5年分の費用と比べる。手取りが費用を大きく上回るなら、早く手放すほど有利です。
  4. 相続した空き家なら、相続から3年を過ぎると使える税の特例が変わる場合があるため、売る時期も併せて確認する。

売却の具体的な進め方や、仲介と買取で手取り・期間がどう違うかは、空き家 売却の進め方|仲介と買取で手取りと期間はここが違うで費用と期間を1つの表にまとめています。まず「今いくらで売れそうか」を把握したい場合は、複数の会社にまとめて査定を依頼して、届いた金額を持ち続ける費用と並べて比べるのが早道です。

よくある質問

空き家は住んでいなくても固定資産税がかかりますか

かかります。固定資産税はその年の1月1日時点の所有者に課税され、居住の有無は関係ありません。標準税率は1.4%で、課税標準額に応じて計算されます。免税点(土地30万円・家屋20万円未満)を下回れば課税されませんが、住宅地では該当しないことがほとんどです。

空き家でも普通に火災保険に入れますか

難しい場合が多いです。日新火災や三井住友海上は、人が常時居住していない建物は原則として住宅用火災保険の引受対象外としています(各社FAQ・2026年9月時点)。別荘扱いや一時的な空家など例外の条件もあるため、加入の可否と保険料は保険会社や代理店に個別に確認してください。

電気や水道は止めた方がいいですか

当分使う予定がなければ、契約を止めると基本料金がかからなくなります。ただし内見や管理で通水・照明が必要な場面もあるため、訪問頻度で判断します。止めた場合、再開には開栓の手続きが必要です。基本料金は事業者・地域で異なり、たとえばガスは東京ガスの一般契約で月759円(税込・2026年9月時点)です。

管理を業者に頼むと月いくらくらいですか

公式料金の例では、屋外中心・月1回の巡回で月額2,750円〜4,400円(税込)、換気・通水など屋内作業まで含めると月額6,600円(税込)という水準があります(空家・空地管理センター、ダスキン・2026年9月時点)。これは相場ではなく実在サービスの料金例で、対応エリアや面積の条件が付きます。

草刈りはどのくらいの頻度で必要ですか

雑草の伸びは季節で変わりますが、放置すると景観悪化や管理不全の指摘につながるため、年に数回は必要です。薬剤散布の公式料金の例では1回9,900円(税込)で、年3回を想定した案内があります(ダスキン・2026年9月時点)。敷地が広いほど費用は上がります。

持ち続けるのと売るのはどちらが得ですか

年額の費用を5年分に換算し、今売った場合の手取り額と比べて判断します。近い将来に使う予定がなく、手取りが5年分の費用を上回るなら、早く手放すほど費用の流出と資産価値の目減りを止められます。まず複数社の査定で今の価値を把握するのが出発点です。

固定資産税が6倍になるというのは本当ですか

放置して自治体から特定空家や管理不全空家として勧告を受けると、住宅用地の特例が外れ、土地の課税標準が元に戻って最大6倍近くになることがあります。ただし空き家にした瞬間に自動で上がるわけではなく、勧告を受けた場合の話です。

参考・出典

  • 総務省「固定資産税・都市計画税」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_11.html
  • 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(概要)」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621960.pdf
  • 中部電力ミライズ「料金単価表 基本メニュー(電灯契約)」 https://miraiz.chuden.co.jp/home/electric/menu/pricelist/basic/
  • 東京都水道局「水道料金・下水道料金の計算方法(23区)」 https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/tetsuduki/ryokin/keisan_23
  • 東京ガス「原料費調整制度に基づくガス料金について(東京地区等)」 https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20241128-01_01.pdf
  • ダスキン「空き家関連サービス」 https://www.duskin.jp/special/akiya/
  • NPO法人 空家・空地管理センター「サービス案内」 https://www.akiya-akichi.or.jp/service/
  • 日新火災「空家に関するFAQ」 https://faq.nisshinfire.co.jp/faq/show/22580?category_id=2138&site_domain=customer
  • 三井住友海上「空家に関するFAQ」 https://faq2.ms-ins.com/faq/show/1264?site_domain=default
  • 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率 改定のご案内」 https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/pdf/202306_announcement.pdf
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