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徳島県で親から相続した木造の実家を、地元の不動産会社に頼んで売りに出したものの、一年たっても内見の連絡が一度も来ない。その間も固定資産税の納付書だけは毎年届く。こうした行き詰まりは、売主の努力不足ではなく、その地域の空き家の多さそのものが原因であることが少なくありません。全国の空き家率は2023年で13.8%ですが、都道府県ごとに見ると倍近い開きがあり、「買い手が付くかどうか」の前提が地域で大きく変わるからです。
そこで最初に結論を言い切ります。空き家率が高い地域で考えるべきは「どうすれば高く売れるか」ではなく「どの出口なら実際に片付くか」です。空き家率が低い都市圏なら通常の仲介(不動産会社に買い手を探してもらう売り方)で決まりやすい一方、空き家率が20%を超える県では仲介で買い手が現れにくく、買取(業者が直接買い取る)、0円譲渡(無償で引き取ってもらう)、相続土地国庫帰属制度(土地を国に引き取ってもらう)の順に、現実的な出口を下りていく判断が要ります。まずは自分の県がランキングのどのあたりかを確認するところから始めます。
空き家率ランキング|高い県・低い県(2023年住宅・土地統計調査)
空き家率は、総務省が5年ごとに実施する「住宅・土地統計調査」で分かります。最新の2023年(令和5年)調査では、全国の総住宅数6,504万7千戸に対して空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最多・過去最高でした。1993年からの30年間でおよそ2倍に増えています。
まず空き家率が高い方から見ると、上位は次のとおりです。20%を超える県が並び、全国平均の1.5倍前後という水準です。
| 順位(高い順) | 都道府県 | 空き家率(2023年) |
|---|---|---|
| 1 | 徳島県 | 21.3% |
| 2 | 和歌山県 | 21.2% |
| 3 | 鹿児島県 | 20.5% |
| 4 | 山梨県 | 20.4% |
| 5 | 高知県 | 20.3% |
| 6 | 長野県 | 20.1% |
反対に、空き家率が低いのは大都市圏を抱える都府県です。次の表に、空き家率が低い方と、主要な都市圏の数値をまとめました。同じ「都市圏」でも、大阪府のように全国平均を上回るところがある点に注意してください。
| 都道府県 | 空き家率(2023年) | 位置づけ |
|---|---|---|
| 埼玉県 | 9.3% | 全国で最も低い水準 |
| 沖縄県 | 9.4% | 低い |
| 神奈川県 | 9.8% | 低い |
| 東京都 | 10.9% | 全国平均より低い |
| 愛知県 | 11.8% | 全国平均より低い |
| 千葉県 | 12.3% | 全国平均に近い |
| 福岡県 | 12.4% | 全国平均に近い |
| (全国) | 13.8% | 基準 |
| 兵庫県 | 13.8% | 全国平均と同水準 |
| 大阪府 | 14.2% | 全国平均より高い |
最も低い埼玉県の9.3%と、最も高い徳島県の21.3%では、住宅に占める空き家の割合が2倍以上違います。同じ「戸建てを一軒売りたい」という状況でも、県が違えば買い手の見つかりやすさがまったく別物になる、というのがこの表から読み取れることです。
なぜ空き家率が高い県では「仲介で売れる」前提が崩れるのか
仲介は、その地域に「その値段で買いたい人」がいることを前提にした売り方です。空き家率が低い都市圏では住宅需要が厚いため、価格を調整すれば買い手が現れやすく、仲介が第一の選択肢になります。ところが空き家率が20%を超えるような県では、そもそも人口が減っていて住宅が余っており、値段を下げても買い手が集まらないことが起こります。仲介では売り出し価格を下げるしか打ち手がなく、下げても決まらないまま時間だけが過ぎる、という状態に陥りやすいのです。
売れないまま持ち続けると負担は積み上がります。管理の手間や火災・倒壊のリスクに加え、固定資産税の面でも不利になり得ます。適切な管理がされず市区町村から勧告を受けると、住宅が建つ土地に認められている課税標準の軽減(200㎡以下の部分は6分の1)が外れ、税額が最大で従来の6倍まで上がる仕組みがあるからです。つまり空き家率が高い地域ほど「売れない期間が長引く」うえに「持っているだけで負担が増える」二重の圧力がかかります。
だからこそ、仲介に固執せず、決まらないなら次の出口へ切り替える判断が重要になります。売り方ごとの手取りと期間の違いは空き家 売却の進め方(仲介と買取の比較)で詳しく整理しています。
出口の探し方|買取→0円譲渡→国庫帰属の順に下りる
空き家率が高い地域では、次の順で出口を探すのが現実的です。上から順に試し、無理なら一段下りる、という考え方です。
- 仲介(買い手を探してもらう)。空き家率が低い〜平均的な地域で、建物や立地に一定の需要が見込めるとき。
- 買取(業者が直接買い取る)。仲介で反応がない、急いで手放したい、再建築不可や残置物ありなど訳あり物件のとき。仲介より価格は下がる代わりに、買い手探しが不要で早く決まりやすいのが特徴です。
- 0円譲渡(無償で引き取ってもらう)。買取価格が付かない、あるいは値が付いても持ち出しの方が大きいとき。お金は受け取れませんが、以後の税・管理負担を止められます。
- 相続土地国庫帰属制度(土地を国に引き取ってもらう)。売る・譲るのいずれもできない土地の最終手段。負担金を払って国に帰属させます。
判断の目安を条件で整理すると、次のようになります。
- 県の空き家率が全国平均(13.8%)を下回り、建物にまだ使える価値がある → まず仲介を試す。
- 空き家率が高い、または半年〜1年仲介で反応がない → 買取に切り替えて査定を取る。
- 買取査定がゼロに近い、値が付いても解体費や残置物処分で持ち出しになる → 0円譲渡で引き取り手を探す。
- 建物を壊して更地にでき、譲渡先も見つからない → 国庫帰属を検討する。
訳あり物件や残置物ありでも査定を受け付ける買取業者があります。空き家率が高い地域で仲介が動かないときは、まず買取で「いくらなら現金化できるか」を把握しておくと、次の判断がしやすくなります。
最終手段「国庫帰属」の実費と条件
買取も0円譲渡も難しい土地の最後の受け皿が、相続土地国庫帰属制度(2023年4月27日施行)です。相続や遺贈で取得した土地を、国に引き取ってもらう仕組みで、費用の目安は次のとおりです。
| 項目 | 金額・条件 |
|---|---|
| 審査手数料 | 土地一筆あたり14,000円 |
| 負担金 | 原則、面積にかかわらず20万円(市街化区域・用途地域内の宅地等は面積に応じて算定) |
| 建物がある土地 | そのままでは申請できない(却下要件)。空き家は解体して更地にする必要がある |
注意したいのは、建物が建ったままでは申請そのものができない点です。空き家を国に返すには先に解体して更地にする必要があり、その解体費用は別途かかります。ほかにも担保権が設定されている、境界が不明確、土壌汚染がある、といった土地は却下・不承認の対象になります。負担金20万円は「土地を国に引き取ってもらうための費用」であって、売却のように現金が入ってくるものではありません。あくまで、売る・譲るのどちらもできなかったときの出口として位置づけてください。
自分の県の数値をどう使うか
ここまでの都道府県ランキングは「県内の平均」です。実際の売りやすさは、同じ県の中でも市区町村や立地で大きく変わります。県の空き家率はあくまで「仲介で粘るか、早めに買取・譲渡へ切り替えるか」を判断する最初の目安として使い、最終的には自分の物件がある地域で査定を取って現実の数字を確かめるのが確実です。
空き家率が高い県だからといって「売れない」と決まるわけではありませんし、低い県でも立地や状態次第で仲介が動かないことはあります。大切なのは、その地域の需要の厚さを踏まえて、仲介に見切りをつける時期を早めに決めておくことです。時間が経つほど建物は傷み、税・管理の負担は積み上がるため、出口の切り替えは早いほど選択肢が残ります。
よくある質問
空き家率が全国で一番高い県はどこですか。
2023年の住宅・土地統計調査では徳島県の21.3%が最も高く、和歌山県21.2%、鹿児島県20.5%と続きます。上位は20%を超えており、全国平均13.8%の1.5倍前後の水準です。
空き家率が低い県はどこですか。
最も低いのは埼玉県の9.3%で、沖縄県9.4%、神奈川県9.8%が続きます。いずれも大都市圏を抱え、住宅需要が比較的厚い地域です。ただし同じ都市圏でも大阪府は14.2%と全国平均を上回ります。
空き家率が高い県だと本当に売れないのですか。
売れないと決まるわけではありませんが、空き家率が高い地域は住宅が余っているため、仲介では買い手が見つかりにくい傾向があります。値下げしても反応がないときは、買取や0円譲渡へ早めに切り替える判断が現実的です。
買取でも値が付かないときはどうすればよいですか。
0円譲渡で引き取り手を探すか、土地を国に返す相続土地国庫帰属制度を検討します。国庫帰属は、審査手数料が土地一筆あたり14,000円、負担金が原則20万円で、建物がある土地は解体して更地にしないと申請できません。
空き家率のランキングはどこで確認できますか。
総務省の「住宅・土地統計調査」の付表「都道府県別の主な指標」で確認できます。5年ごとの調査で、最新は2023年(令和5年)調査です。
空き家を持ち続けると税金は上がりますか。
管理不全のまま市区町村から勧告を受けると、住宅用地に認められている固定資産税の軽減(200㎡以下の部分は課税標準6分の1)が外れ、税額が最大で従来の6倍まで上がる場合があります。勧告を受けた状態で1月1日を迎えた年度分から適用されます。
参考・出典
- 総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果 概要 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf
- 総務省「固定資産税・都市計画税」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_11.html
- 国土交通省 空家等対策特別措置法 改正法の概要 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621960.pdf
- 法務省 相続土地国庫帰属制度について https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
- 法務省 相続土地国庫帰属制度の負担金 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html
