空き家 火災保険 相場|見積りが分かれる理由

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相続した実家の空き家に火災保険をかけようと2つの代理店へ見積りを頼んだら、同じ建物のはずなのに年額が大きく食い違っていた。どちらが正しいのか分からず、そのまま止まってしまった。こうした相談は珍しくありません。「空き家 火災保険 相場」と検索しても一つの金額が出てこないのは、情報が足りないからではなく、火災保険の保険料が建物ごとの条件を積み上げて決まる仕組みだからです。

先に結論をお伝えします。空き家の火災保険に、全国で通用する決まった相場額はありません。保険料はおもに「建物の構造区分」「所在地」「補償範囲」「築年数」の4つで組み上がり、この組み合わせが物件ごとに違うため、延床面積が同じでも金額は変わります。ですから見積りは金額の大小だけで比べるのではなく、内訳のどこがどう積まれているかを読み解いて選ぶのが正しい向き合い方です。この記事では、見積りが分かれる理由と、届いた見積書のどこから読めばよいかを、公的な資料に沿って整理します。空き家に火災保険が付けにくい事情や入れない場合の対処は別の記事で扱っているため、ここでは金額の中身の読み方に絞ります。

空き家の火災保険に「相場」が出ない理由

火災保険料は、各損害保険会社が独自に算出します。その計算の土台になっているのが、損害保険料率算出機構(保険会社が集まってつくる、料率の基礎データを算定する団体)が公表する「参考純率」です。参考純率とは、保険会社が保険料を計算するときの基礎値のうち、保険金の支払いに充てる部分の全国共通の目安のことです。各社はこれを参考にしつつ、自社の経費や利益を加えて実際の保険料を決めます。同機構も「参考純率の改定率は、実際に契約される保険会社の保険商品の改定率とは異なります」と注記しており、参考純率そのものが保険料ではありません。

この参考純率が、建物の条件ごとに細かく分かれています。だからこそ物件が違えば金額が変わり、「空き家なら年額いくら」という一律の数字が成立しません。実際、同機構が2023年6月に公表した改定では、木造等の建物について、保険金額を建物2,000万円・家財1,000万円・築10年以上と同じ条件でそろえても、都道府県によって改定率が次のように違っていました。

都道府県(木造等・同条件) 参考純率の改定率
東京都 +6.3%(最も小さい)
愛知県 +8.9%
大阪府 +17.3%
群馬県 +18.1%(最も大きい)

これは保険料そのものではなく参考純率の改定率ですが、条件を同じにしても地域だけでこれだけ差が開くという事実は、相場が一つに定まらない理由をよく表しています。なお全国平均の引上げ率は13.0%でしたが、これはすべての契約条件を平均した数値であって、個々の建物に13.0%が当てはまるわけではありません(2026年9月時点・損害保険料率算出機構公表資料)。

建物の構造区分(M・T・H構造)で分かれる

保険料を左右する最初の要素が、建物の構造区分です。燃えにくく壊れにくい建物ほどリスクが低いとみなされ、保険料は下がります。住宅用建物の構造は次の3区分で整理されています。

区分 おもな建物
M構造 耐火構造(鉄筋コンクリート造など)の共同住宅(マンションなど)
T構造 M構造以外の耐火構造の建物、準耐火構造(鉄骨造など)の建物
H構造 M・T構造以外(木造など)の建物

空き家として問題になりやすい木造の一戸建ては、多くがH構造に当たります。H構造はM構造やT構造に比べて燃え広がりやすいと評価されるため、同じ補償内容・同じ所在地でも保険料は高くなる傾向があります。見積りが2社で違ったとき、まず確かめたいのが、両方の見積りが同じ構造区分で計算されているかどうかです。片方がT構造、もう片方がH構造で見積もっていれば、金額がそろわないのは当然です。建物の構造の判定は登記事項や建築時の仕様で決まるため、代理店に「わが家はどの区分ですか」と根拠を尋ねると、比較の土台がそろいます。(構造区分の定義は損害保険料率算出機構の資料に基づく、2026年9月時点)

所在地と補償範囲で見積りが分かれる

2つ目と3つ目の要素が、所在地と補償範囲です。とくに大きく効くのが水災(大雨・洪水・高潮・土砂崩れなどによる損害)の扱いです。2023年の改定で、水災に関する料率は地域のリスクに応じて5区分に細分化されました。市区町村ごとに「1等地」(最も安い)から「5等地」(最も高い)まで分かれ、保険料が最も高い地域と最も低い地域の差はおよそ1.2倍とされています。自分の物件がどの等地かは、同機構の「水災等地検索システム」で確認できます。

ここで重要なのが、補償範囲の設計です。水災リスクの低い高台の物件なら、水災補償を外して保険料を抑える選び方もあります。逆に川沿いや低地では水災を付けておく意味が大きくなります。2社の見積りで、片方が水災を付け、もう片方が外していれば、金額が違って当たり前です。空き家は普段人がいないぶん、漏水や台風被害の発見が遅れやすい面もあるため、どの災害まで備えるかは物件の立地と管理状況を見て決めることになります。見積りを比べるときは、火災・落雷・破裂爆発・風災・水災・盗難・破損といった補償項目のうち、どれが入ってどれが外れているかを1行ずつ突き合わせてください。補償の広さが違えば、安い見積りが必ずしも得とは限りません。

なお地震による損害は、火災保険では原則として補償されず、地震保険を火災保険とセットで付ける必要があります。地震保険の基礎となる料率も損害保険料率算出機構が算定し、都道府県と建物の構造によって決まります。付けるかどうかで総額が変わるため、見積書に地震保険が含まれているかも確認しておくと安心です。

築年数と、空き家であること自体の影響

4つ目の要素が築年数です。古い建物ほど設備の劣化などでリスクが高いと評価され、保険料が上がりやすくなります。先ほどの改定率の例も「築10年以上」という条件でそろえた数値でした。築年数は動かせない条件なので、比較の対象というより、なぜ古い空き家の見積りが高めに出るのかという背景として押さえておくとよいでしょう。

さらに空き家では、そもそも住宅用の火災保険に入れるかという前提の問題があります。ある損害保険会社は「家財等が備え付けられた住宅であっても、人が常時居住していない場合は空家にあたる」とし、空家は引受対象外としています。別の会社では、季節的に使う別荘や、一時的に空家となっている(自ら住む予定がある、転勤で一時的、入居者を募集中など)建物に限って引き受ける、といった例外を設けています。空き家向けの引受は商品や会社ごとに条件が大きく異なるため、まずは代理店に自分の物件が引受対象かを確認するところから始まります。この点の詳しい対処は、当サイトの空き家の火災保険に関する別記事で扱っています。(各社の記載は2026年9月時点・公式サイト確認)

届いた見積書の内訳の読み方

金額の大小に惑わされないために、見積りが2つ以上そろったら、次の順番で内訳を突き合わせます。条件をそろえてから初めて、金額の差に意味が出ます。

  1. 建物の構造区分(M・T・H)が同じか。違えば金額が違うのは当然なので、まず正しい区分にそろえてもらう。
  2. 保険金額(建物・家財それぞれの補償額)が同じか。片方だけ高い補償額なら保険料も高くなる。
  3. 補償項目が同じか。火災・落雷・風災・水災・盗難・破損などのうち、どれが入りどれが外れているかを1行ずつ照合する。
  4. 水災の等地・地震保険の有無・免責金額(自己負担額)の設定が同じか。
  5. 契約期間が同じか。長期一括だと1年あたりが割安に見えることがある。

この5点をそろえたうえで残った差が、各社の経費や割引による純粋な価格差です。逆に言えば、ここをそろえずに総額だけを比べると、補償が薄いから安いだけの見積りを「お得」と誤解しかねません。見積りが分かれることは異常ではなく、条件が違えば分かれるのが正常です。読むべきは金額そのものではなく、その金額が何をどこまで守る値段なのか、という中身です。

保険を続けるか、手放すかの見極め

見積りを読み解いた先で、そもそもこの空き家を持ち続けるべきか、という判断に行き着く方もいます。人が住まない家に毎年保険料を払い、管理の手間も固定資産税もかかり続けるより、売却して負担ごと手放したほうが合う場合があります。仲介と買取では手取りも期間も大きく変わるため、まずは全体像を押さえてから、保険を続けるか手放すかを比べるとよいでしょう。売却の進め方は空き家 売却の進め方|仲介と買取で手取りと期間はここが違うで詳しく整理しています。

よくある質問

空き家の火災保険の相場はいくらですか。

一律の相場額はありません。保険料は建物の構造区分・所在地・補償範囲・築年数などの組み合わせで決まり、物件ごとに違うためです。公的な統計も存在しないため、金額は必ず自分の物件で見積りを取って確認する必要があります。

同じ建物なのに2社で見積りが違うのはなぜですか。

構造区分の判定、保険金額の設定、補償項目、水災の等地、地震保険の有無、契約期間のいずれかが異なると金額が変わります。まずこれらの条件をそろえたうえで比べると、純粋な価格差が見えてきます。

木造の空き家はやはり保険料が高いのですか。

木造の多くはH構造に区分され、耐火構造のM・T構造より燃え広がりやすいと評価されるため、同じ条件でも高くなる傾向があります。ただし所在地や補償範囲の設計しだいで差は動くため、構造だけで一概には決まりません。

水災補償は付けたほうがよいですか。

物件の立地しだいです。損害保険料率算出機構の水災等地検索システムで自分の市区町村の等地を確認し、川沿いや低地でリスクが高いなら付ける意味が大きくなります。高台などリスクの低い立地なら外して保険料を抑える選び方もあります。

空き家でも火災保険に入れますか。

会社や商品によります。人が常時居住していない建物を引受対象外とする会社もあれば、別荘や一時的な空家など条件付きで引き受ける会社もあります。まず代理店に自分の物件が引受対象かを確認してください。

地震保険は別に必要ですか。

地震による損害は火災保険では原則補償されないため、備えるなら地震保険を火災保険とセットで付ける必要があります。付けるかどうかで総額が変わるので、見積書に含まれているかを確認しましょう。

参考・出典

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