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親が住んでいたマンションの一室を相続したものの、誰も住まないまま管理費と修繕積立金だけが毎月引き落とされていく。売ろうと調べても、出てくるのは庭の草刈りや解体の話ばかりで、区分所有のマンション特有の注意点が見当たらない。こうした状況で戸建て向けの情報をそのまま当てはめると、税金と滞納の二か所で見込み違いが起きます。
マンションの空き家売却が戸建てと決定的に違うのは二点です。ひとつは、相続した空き家に使える「3,000万円の特別控除」が区分所有のマンションでは原則使えないこと。もうひとつは、前の所有者が滞納した管理費や修繕積立金が、買った人(特定承継人=物件を引き継いだ新しい所有者)に引き継がれることです。この二点を先に押さえ、税負担を織り込んだ手取りと、滞納の清算方法を決めてから売り出すのが、遠回りに見えて確実です。
空き家の過半はマンションなどの共同住宅
総務省の令和5年住宅・土地統計調査(2024年9月確報)によると、全国の空き家は900万2千戸、空き家率13.8%で、いずれも過去最多・最高でした。この空き家を建て方で分けると、一戸建の空き家が352万3千戸(空き家総数の39.1%)であるのに対し、マンションやアパートなどの共同住宅は502万9千戸(55.9%)と、じつは過半を占めています。
「空き家といえば古い戸建て」という印象が強いのですが、数のうえではマンションの空き家のほうが多いのが実情です。それでも世の中の情報は戸建てに偏っているため、区分所有ならではの論点が見落とされがちです。まずは戸建てと分かれる点を一覧で押さえておきます。
| 比較する項目 | 戸建ての空き家 | 区分所有のマンション |
|---|---|---|
| 空き家の3,000万円特別控除 | 要件を満たせば使える | 区分所有建物登記のため原則使えない |
| 前所有者の滞納管理費・修繕積立金 | 原則発生しない | 買主に引き継がれる(区分所有法第8条) |
| 空き家でも続く毎月の固定費 | 固定資産税・保険が中心 | 管理費・修繕積立金が空き家でも発生 |
| 解体という選択肢 | 取り得る | 専有部分だけの解体はできない |
広告この記事の結論:ラクウル(相続不動産)
マンションは区分所有建物登記のため空き家の3,000万円特別控除が原則使えず、取得費加算の特例など別の道を検討する必要があると本文にあります。こうした判断を含めて相続の手続きを窓口に相談する方法もあります。
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マンションの空き家は「3,000万円特別控除」が原則使えない
相続した空き家を売るときの大きな節税策に、譲渡所得(売った利益)から最高3,000万円を差し引ける「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特別控除」があります。ところがこの特例には、家屋についての三つの要件があります。国税庁の説明では、(1)昭和56年5月31日以前に建築されたこと、(2)区分所有建物登記がされている建物でないこと、(3)相続の開始の直前に被相続人以外に居住していた人がいなかったこと、の三つです。
問題は(2)です。分譲マンションの一室は、通常「区分所有建物登記」がされています。つまりマンションは、この時点で家屋の要件を外れ、空き家の3,000万円特別控除が原則として使えません。戸建てなら控除で税金がゼロになる利益額でも、マンションでは譲渡所得にそのまま税金がかかることになります。この差は後段の計算例で具体的に示します。仲介と買取のどちらが手取りで有利かは売却方法ごとの費用と期間をまとめた記事で整理しています。
なお、相続税を納めた人は、代わりに「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」(納めた相続税の一部を取得費に足して利益を圧縮できる制度)を検討できます。この特例には空き家特例のような区分所有の除外がなく、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ることが条件です。使えるかどうかは税理士に確認してください。
滞納した管理費・修繕積立金は買主に引き継がれる
マンションは、空き家であっても区分所有者である限り、管理費と修繕積立金が毎月発生します。ここで注意したいのが、前の所有者が滞納した分の行方です。建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第7条は、管理組合が管理費などの債権について区分所有権の上に先取特権(優先して回収できる権利)を持つと定めています。そして第8条は、その債権を「特定承継人」、つまり物件を買った新しい所有者に対しても行使できると定めています。
言いかえると、滞納したまま売却すると、その未払い分を管理組合が買主に請求できます。買主にとっては予定外の負担ですから、当然、売買の前に清算を求められるか、価格に反映されます。滞納を隠して売ることはできません。宅地建物取引業者による重要事項説明では、管理費・修繕積立金の額と滞納の有無が説明対象になります。
滞納があるときの進め方(条件と対応)
- 滞納の有無と金額を管理会社・管理組合に照会する。滞納があるなら、いつ分がいくら残っているかを書面で確認する。
- 売買契約前に自分で清算できるなら、決済前に完済しておくのが最もすっきりする。
- 清算資金がすぐ用意できないなら、決済時に売買代金から差し引いて精算する方法を、仲介会社を通じて買主と合意しておく。
- いずれの場合も、滞納額は重要事項説明で買主に開示される前提で交渉を組み立てる。
マンション空き家売却の流れと契約時の注意点
マンションの空き家を売る流れ自体は、一般の中古マンション売却と大きく変わりません。おおむね次の順に進みます。
- 査定を受け、売り出し価格の目安を決める。
- 不動産会社と媒介契約(仲介を依頼する契約)を結ぶ。
- 売り出し・内覧対応を行う。
- 買付(購入申込)を受け、価格や引渡し条件を調整する。
- 売買契約を結ぶ。ここで手付金の授受と、宅建業者による重要事項説明が行われる。
- 決済・引渡しを行い、所有権移転登記をする。
マンションで特に確認したいのは、契約から決済までの間に扱う三点です。第一に、管理費・修繕積立金は決済日を境に日割りで精算するのが通例なので、直近の引き落とし額を用意しておくこと。第二に、重要事項説明では、管理費・修繕積立金の月額、滞納の有無、修繕積立金の総額や大規模修繕の予定、管理規約の使用制限などが説明されるため、管理会社から最新の重要事項調査報告書を取り寄せておくこと。第三に、相続したマンションなら、売る前に相続登記(名義の書き換え)を済ませておくことです。名義が被相続人のままでは売買の決済ができません。
売却でかかる費用と税金の計算例
費用は「売るためにかかるお金」と「利益に対する税金」に分けて見積もると混乱しません。ここでは、相続したマンションを1,000万円で売る場合を例にします。
まず仲介手数料の上限です。宅地建物取引業者の報酬告示では、売買代金を区分して、200万円以下の部分は5.5%、200万円超400万円以下の部分は4.4%、400万円超の部分は3.3%(いずれも税込)で計算します。1,000万円なら、200万円×5.5%=11万円、200万円×4.4%=8.8万円、600万円×3.3%=19.8万円で、合計39.6万円(税込)が上限です。
売買代金が800万円以下の物件は、「低廉な空家等」の特例により、業者があらかじめ合意すれば上限33万円(税込)まで受け取れます。使用の状態は問われないため、安いマンションでも対象です。通常の計算より高くなる場合があるので、媒介契約前に金額を確認しておきましょう。売買契約書の印紙税は、軽減措置により500万円超1,000万円以下で5,000円です。
次に税金です。相続で取得したマンションは、被相続人が買った日を引き継いで所有期間を数えるため(国税庁No.3270)、相続の直後に売っても長期譲渡(所有期間5年超)になることが多く、税率は原則として長期のものが適用されます。取得費が分からない場合は、売った金額の5%を概算取得費とできます(1,000万円なら50万円)。
ここで、空き家の3,000万円特別控除が使えないマンションの譲渡所得を計算します。譲渡所得=収入金額1,000万円−取得費50万円−譲渡費用約40万円(仲介手数料39.6万円+印紙税0.5万円)=約910万円。長期譲渡の税率は、所得税15%+復興特別所得税(所得税額の2.1%)+住民税5%で合計20.315%(令和8年分の場合の計算値)です。約910万円×20.315%=約185万円が税額の目安になります。戸建てで控除の要件を満たせばこの利益は控除で消せますが、マンションはこの道が閉ざされているため、その分の税負担が残るという構図です。
| 項目 | 目安(1,000万円で売る場合) | 根拠 |
|---|---|---|
| 仲介手数料の上限 | 39.6万円(税込) | 宅建業報酬告示の区分計算 |
| 売買契約書の印紙税 | 5,000円(軽減後) | 国税庁 No.7108 |
| 譲渡所得税(3,000万円控除なし・長期) | 約185万円 | 上記の計算例 |
各社の料金や条件は年度で変わります(2026年9月時点・公式データで確認)。実際の税額は取得費の資料の有無や他の所得で変わるため、申告前に税務署か税理士で確認してください。
よくある質問
マンションの空き家でも3,000万円特別控除は使えますか
原則として使えません。空き家特例は家屋が「区分所有建物登記がされている建物でないこと」を要件にしており、分譲マンションはこの登記がされているためです。個別の登記状況で例外がないかは、税理士や税務署に確認してください。
前の所有者が滞納した管理費は、買った人が払うのですか
区分所有法第8条により、滞納分の債権は特定承継人(買主)に対しても請求できます。そのため実務では、決済前に売主が清算するか、代金から差し引いて精算するのが通例です。金額は重要事項説明で買主に開示されます。
空き家のマンションでも管理費・修繕積立金は払い続けるのですか
区分所有者である限り、居住していなくても毎月発生します。空き家でも支払義務は続き、滞納すると先取特権の対象になり、売却時には買主へ引き継がれます。
管理費を滞納したままでも売れますか
売却自体は可能です。ただし重要事項説明で滞納額が買主に説明され、通常は決済時に清算するか価格に反映されます。滞納を隠して売ることはできません。
相続したマンションを相続直後に売ると、短期譲渡で高い税率になりますか
相続で取得した場合は被相続人の取得日を引き継ぐため(国税庁No.3270)、被相続人が5年を超えて所有していれば、相続直後に売っても長期譲渡になることが多いです。所有期間は取得日から売った年の1月1日までで判定します。
空き家特例が使えないマンションで、ほかに使える税の特例はありますか
相続税を納めた人は、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算)」を検討できます。相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡が条件で、区分所有だからという除外はありません。適用の可否は税理士に確認してください。
買取と仲介、マンションの空き家はどちらが向きますか
手取りを重視するなら仲介、期間の確実性や現況のまま手放したいなら買取が向きます。滞納や修繕積立金の負担が重い物件は、清算を含めて業者に相談すると整理しやすくなります。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3202「譲渡所得の計算のしかた(総合譲渡)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3258「取得費が分からないとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.7108「不動産の譲渡・消費貸借等に関する契約書」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
- 国土交通省「宅地建物取引業者が受けることができる報酬の額」(告示・消費者向けお知らせ) https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000013.html
- 建物の区分所有等に関する法律 第7条・第8条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069
- 総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報)結果 概要 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf

