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親から相続した田舎の実家。最寄り駅まで車で30分、築45年の木造戸建てを地元の不動産会社に頼んで売りに出したのに、1年たっても内見の申し込みがゼロ。値下げを勧められても、これ以上は下げようがない。固定資産税と草刈りの手間だけが毎年のしかかる。そんな状態で「もう売れないのでは」と手が止まっている方に向けた記事です。
結論から言うと、田舎で売れない家の出口は「仲介で売る」だけではありません。売る・貸す・手放す(引き取ってもらう)の3系統があり、選ぶ基準は「物件と土地の状態」と「どれだけ急ぐか」の2つです。まだ値がつく可能性があるなら売る系統、住める状態なら貸す系統、値がつかず維持だけがつらいなら手放す系統に進みます。この記事は各出口の入口と実費を一覧で並べ、あなたがどれに当てはまるかを判断できるようにするための「出口の地図」です。
田舎の家が「売れない」ときに最初に切り分けること
総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%で過去最高です(2023年10月時点)。とくに空き家率が高いのは徳島県21.3%、和歌山県21.2%、鹿児島県20.5%、山梨県20.4%、高知県20.3%、長野県20.1%といった地方の県で、「田舎の家が売れにくい」のはあなたの物件だけの問題ではなく、地域全体の需給がそうなっているという背景があります。
まず切り分けたいのは、次の3点です。
- 建物にまだ価値・需要があるか(住める状態か、リフォーム前提でも住みたい人がいそうか)
- 土地に価値があるか(更地にすれば買い手が付くか、それとも土地自体に需要がないか)
- 急いで手放したいか、時間をかけてよいか(税金や管理の負担が限界か、まだ待てるか)
この3点で、進むべき系統が変わります。売却の方法そのもの(仲介・買取・一括査定の違いや費用)は空き家 売却の方法と費用|仲介・買取・一括査定の違いで詳しく整理しているので、本記事では「売る以外も含めた出口の全体像」に絞ります。
出口の全体像|売る・貸す・手放すの3系統
田舎の空き家で使える出口を、系統別に一覧にしました。「向く物件」と「入口(どこに相談・申請するか)」を軸にしています。
| 系統 | 出口 | 向く物件・状況 | 入口 |
|---|---|---|---|
| 売る | 仲介で売る | 時間をかけてよい・地域に一定の需要がある | 地元/広域の不動産会社 |
| 買取業者に売る | 早く現金化したい・訳ありでも手放したい | 買取・訳あり物件専門業者 | |
| 一括査定で比較 | 相場観がない・複数社を比べたい | 一括査定サイト | |
| 空き家バンクに登録 | 移住希望者・DIY好きに当たれば売れる立地 | 自治体/全国版空き家バンク | |
| 貸す | DIY型賃貸で貸す | 手を入れずに現状のまま貸したい | 不動産会社・自治体の相談窓口 |
| 民泊として活用 | 観光地・二拠点需要がある立地 | 都道府県知事等へ届出 | |
| 手放す | 0円譲渡・引き取り | 値はつかないが欲しい人はいるかもしれない | 0円物件マッチング・知人・隣地所有者 |
| 解体して土地を売る | 建物が負債・土地に需要がある | 解体業者+不動産会社(自治体補助を確認) | |
| 相続土地国庫帰属制度 | 更地にでき、他に買い手がいない土地 | 法務局 | |
| 相続放棄 | 相続手続き前・資産全体がマイナス | 家庭裁判所 |
ポイントは、下に行くほど「手元にお金が残らない、むしろ費用が出る出口」だということです。上から順に検討し、どこで折り合いをつけるかを決めていきます。
まだ売れる可能性を探る出口
仲介と買取、そして「田舎ならでは」の手数料特例
仲介は時間がかかる代わりに手取りが高く、買取は安くなる代わりに早く確実に現金化できます。この違いは比較記事にゆずりますが、田舎の低価格帯の家で知っておきたいのが「低廉な空家等」の仲介手数料特例です。
売買代金(消費税相当額を含まない)が800万円以下の宅地・建物は、通常の上限を超えて仲介手数料を受け取ってよいことになっていますが、その上限は依頼者一人につき33万円(税込)までと決められています(令和6年7月1日施行の告示改正)。田舎の家は遠方調査などで手間がかかり、業者が扱いを渋りやすいのですが、この特例で報酬が確保されるため、以前より引き受けてもらいやすくなっています。「使っていない空き家」でなくても800万円以下なら対象です。
一括査定と空き家バンク
相場観がないなら、複数社に同時に査定を依頼できる一括査定サイトで相場を掴むのが早道です。使い方の注意点は別記事にゆずります。
もう一つの選択肢が空き家バンクです。国が運営する全国版空き家・空き地バンクは株式会社LIFULLとアットホーム株式会社が運営しており、移住希望者やDIYで直したい層に直接届きます。市場の仲介では相手にされにくい立地でも、「田舎暮らしがしたい」という需要とかみ合えば動くことがあります。ただし参加自治体数・登録物件数は公表されておらず、必ず売れる仕組みではないので、仲介や査定と並行して登録しておく位置づけが現実的です。
貸して持ち続ける・活用する出口
DIY型賃貸なら現状のまま貸せる
「売れないなら貸す」も出口の一つです。ネックになる修繕費を抑える方法として、国土交通省が契約書式例を公表しているDIY型賃貸借(借主の意向で住宅の改修を行える賃貸借契約)があります。貸主が原状回復のために手を入れず、現状のまま貸し、借主が自分で直して住む形です。改修の範囲と、退去時の原状回復を求めるかどうかを契約時に取り決めておくのが要点になります。
民泊は届出制・年間180日まで
観光地や二拠点生活の需要がある立地なら、住宅宿泊事業法にもとづく民泊も候補です。年間の提供日数の上限は180日で、地域の実情により条例でさらに制限されることがあります。都道府県知事等への届出制で、家主が現地にいない「家主不在型」は住宅宿泊管理業者への委託が義務づけられています。始め方と収支の実例は専用記事にゆずりますが、「貸す系統」も出口の地図に入れておいてください。
どうしても手放したい出口と、その実費
値がつかず、貸すあてもなく、維持だけがつらい。そういう場合の「手放す系統」です。ここは手元にお金が残らず、費用が出ることが多いので、実費を具体的に見ておきます。
0円譲渡・解体して土地を売る
まず、0円でも引き取り手を探す方法があります。値はつかなくても「タダなら欲しい」という隣地所有者や移住希望者はいるかもしれません。詳しい探し方は「差し上げます・0円物件」の記事にゆずります。
建物が買い手を遠ざけているなら、解体して更地にしてから土地を売る手もあります。解体費用には公的な全国平均統計がなく、構造・延床面積・立地(重機が入るか)・残置物の量で大きく変わるため、複数社から見積りを取るのが前提です。自治体の補助が使える場合があり、代表例として次のようなものがあります(いずれも年度ごとに要確認)。
- 東京都の空き家家財整理・解体促進事業: 解体費用(消費税等を除く)の2分の1、上限10万円。都の相談窓口に相談した所有者が対象(2026年9月時点・公式サイト確認)
- 横浜市の住宅除却補助制度: 旧耐震(昭和56年5月末以前)の木造住宅等で上限50万円など(2026年9月時点・公式サイト確認)
- 大阪市の狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度: 対象地区の戸建で105万円/戸〜など(2026年9月時点・公式サイト確認)
解体は費用が先に出るので、更地にした後に土地が確実に売れるか、先に不動産会社に見込みを確認してから進めるのが安全です。
最後の出口としての相続土地国庫帰属制度
買い手も引き取り手も見つからない土地の最終手段が、相続土地国庫帰属制度(相続・遺贈で取得した土地を国に引き取ってもらう制度、令和5年4月27日施行)です。実費の目安を明細で示します。
- 審査手数料: 土地一筆あたり14,000円
- 負担金: 原則として面積にかかわらず20万円(市街化区域・用途地域内の宅地等は面積に応じて算定)
ここで重要なのは、建物がある土地は却下要件だという点です。つまり空き家は解体して更地にしないと申請できません。仮に横浜市の補助を使って解体費が実質いくらか抑えられたとしても、解体費+審査手数料14,000円+負担金20万円がかかる計算になります。担保権が設定されている、土壌汚染や境界不明、崖や地上障害物があるといった土地も却下・不承認の対象なので、誰にとっても使える出口ではありません。「お金を払ってでも土地の管理責任から解放されたい」という最後の選択肢と考えてください。
相続手続き前なら相続放棄という分岐
まだ相続の手続きをしていない段階なら、相続放棄も選択肢です。自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ申述します。費用は申述人1人につき収入印紙800円と郵便切手です。
ただし放棄しても管理責任がすぐ消えるとは限りません。民法940条(令和5年4月1日施行の改正後)では、相続放棄をした者は放棄の時にその財産を「現に占有している」場合に限り、相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで保存義務を負います。遠方に住んで占有していない相続人には義務が及ばない一方、その空き家に住んでいた・鍵を管理していたような場合は引き渡しまで責任が残ります。放棄は資産全体がマイナスのときの手段で、「この家だけ放棄」はできないため、相続財産全体を見て判断する必要があります。詳しくは相続放棄の記事にゆずります。
売れない田舎の家、出口の選び方(判断フロー)
ここまでの出口を、条件から結論へたどれる形に並べます。上から順に当てはめてください。
- 建物がまだ住める/リフォームで住めそう → 仲介・一括査定で売る、または空き家バンクに登録。並行してDIY型賃貸で貸すことも検討
- 建物は古いが土地に需要はありそう → 買取業者に相談、または解体して更地にしてから売る(先に解体後の売却見込みと自治体補助を確認)
- 早く確実に手放したい・訳あり要素がある → 買取業者に査定を依頼(現状のまま買い取ってもらえるか確認)
- 値はつかないが欲しい人はいるかも → 0円譲渡・引き取りマッチングや隣地所有者への打診
- 買い手も引き取り手もいない土地 → 更地にできるなら相続土地国庫帰属制度(審査手数料14,000円+負担金原則20万円)
- まだ相続前で、資産全体がマイナス → 相続放棄(3か月以内・家庭裁判所へ申述)を専門家と検討
相続で取得した空き家を売る場合は、譲渡益から最高3,000万円を差し引ける「空き家の3,000万円特別控除」が使えることがあり、その適用には期限(相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ譲渡は令和9年12月31日まで)があります。売る方向で動くなら、この期限を意識して早めに手を打つほど選択肢が広く残ります(条件の詳細は控除の専用記事へ)。
よくある質問
田舎の家がまったく売れません。放置し続けるとどうなりますか。
管理されず放置が続くと、市町村から「管理不全空家」や「特定空家」として指導・勧告を受けることがあります。勧告を受けると土地の固定資産税を軽くしている住宅用地特例の対象から外れ、税負担が上がります。維持費と将来リスクの両面から、いずれかの出口に動くことをおすすめします。
解体すれば土地は必ず売れますか。
必ずとは言えません。田舎では土地自体に需要がない地域もあり、更地にしても売れないことがあります。解体費用は先に出るため、更地化後に売れる見込みがあるか、事前に不動産会社へ確認してから解体を判断してください。
いらない土地を国に引き取ってもらえると聞きました。無料ですか。
無料ではありません。相続土地国庫帰属制度では審査手数料が土地一筆あたり14,000円、負担金が原則20万円かかります。さらに建物があると申請できないため、空き家は解体して更地にする必要があり、その解体費も別途必要です。
相続放棄すれば、田舎の家の管理から解放されますか。
状況によります。改正後の民法940条では、放棄した時にその財産を「現に占有している」場合に限り、引き渡しまで保存義務が残ります。遠方で占有していなければ義務は及びませんが、鍵を管理していたような場合は責任が残ります。また相続放棄は資産全体に及ぶため、この家だけ放棄することはできません。
800万円以下の家は仲介を断られやすいと聞きました。
低価格帯は手間に対して報酬が見合わず敬遠されがちでしたが、令和6年7月施行の改正で、売買代金800万円以下の「低廉な空家等」は依頼者一人につき最大33万円(税込)まで仲介手数料を受け取れるようになりました。以前より引き受けてもらいやすくなっています。
空き家バンクに登録すれば売れますか。
登録は無料で移住希望者に届きやすい一方、必ず売れる仕組みではなく、参加自治体数や成約数も公表されていません。仲介や一括査定と並行して登録しておく、補助的な出口として使うのが現実的です。
参考・出典
- 総務省 令和5年住宅・土地統計調査 基本集計(確報)概要 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf
- 国土交通省 宅地建物取引業者が受けることができる報酬の額(告示第1552号 最終改正 令和6年告示第949号) https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001750143.pdf
- 国税庁 タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国土交通省 空き家・空き地バンク総合情報ページ https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000131.html
- 国土交通省 DIY型賃貸借 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000046.html
- 観光庁 民泊制度ポータルサイト https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/
- 法務省 相続土地国庫帰属制度 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html / 負担金 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html
- 民法 第940条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 / 法務省 新制度の概要 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00499.html
- 裁判所 相続の放棄の申述 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
- 東京都住宅政策本部 空き家家財整理・解体促進事業 https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/akiya/hojo/kaitai_seiri
- 横浜市 住宅除却補助制度 https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/kenchiku/bosai/taishin/hojokinshienseido/mokutai/jyuutakujyokyaku.html
- 大阪市 狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度 https://www.city.osaka.lg.jp/toshiseibi/page/0000531835.html

