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親から相続した実家を空き家のまま持っている方から、「空き家は固定資産税が6倍になると聞いたが、それはいつからなのか」という質問をよく受けます。市区町村から手紙が届いて、来月から上がるのか、来年度からなのか、それとも何もしなければ上がらないのかが分からず不安になる、という場面です。
結論を先に言うと、空き家であるというだけで自動的に税金が上がるわけではありません。市区町村から「勧告(かんこく=改善するよう正式に求める行政の措置)」を受け、その勧告を受けた状態のまま1月1日を迎えた年度分から、土地の固定資産税を軽くしている「住宅用地の特例」が外れて税額が上がります。判断の基準は「勧告を受けたかどうか」と「1月1日時点の状態」の2つです。この記事では、なぜその時期になるのかを、地方税法と空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)の条文から順に説明します。
税金が上がる仕組みは「住宅用地の特例」が外れること

住宅が建っている土地には、固定資産税の課税標準(税額を計算するもとになる金額)を減らす「住宅用地の特例」があります。総務省の資料によると、200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)は課税標準が6分の1に、200平方メートルを超える部分(一般住宅用地)は3分の1になります。固定資産税の標準税率は1.4%です。
よく言われる「6倍」は、この特例が外れて課税標準が6分の1から元の金額に戻ることを言い換えた表現です。200平方メートルを超える部分については、3分の1から元に戻るので3倍です。空き家だから税率が6倍になるのではなく、あくまで軽減が外れて元の水準に戻る、という点が出発点になります。
仮に土地の固定資産税評価額を1,000万円、全体が200平方メートル以下の小規模住宅用地だとした場合の税額を並べると、次のようになります。評価額はあくまで説明のための仮の数字です。
| 状態 | 課税標準 | 固定資産税(標準税率1.4%) |
|---|---|---|
| 住宅用地の特例あり(6分の1) | 約166.7万円 | 約2.3万円 |
| 特例が外れた後(元に戻る) | 1,000万円 | 14万円 |
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このように、特例があるうちと外れた後では税額が大きく変わります。ただし実際の税額は負担調整措置などがあり、単純に6倍ちょうどになるとは限りません。また、そもそもどういう条件で特例が外れるのかは自動ではなく、条件を満たす必要があります。特例が外れる条件そのものについては、当サイトの別記事で詳しく整理しています。この記事は「いつから上がるのか」という時期に絞って説明します。
「いつから」を決めるのは賦課期日の1月1日
固定資産税がいつの分から上がるのかは、地方税法の2つの条文から導けます。ひとつは、住宅用地の課税標準の特例を定めた第349条の3の2です。この条文は、住宅用地の対象から「空家法第13条第2項の勧告を受けた管理不全空家等の敷地」と「空家法第22条第2項の勧告を受けた特定空家等の敷地」を除外しています。つまり、勧告を受けた土地は住宅用地として扱われなくなり、特例が使えなくなります。
もうひとつは、固定資産税の賦課期日(ふかきじつ=その年度の税金を誰にいくら課すかを判断する基準日)を定めた第359条です。ここでは賦課期日を「当該年度の初日の属する年の1月1日」と定めています。固定資産税は、毎年1月1日時点の状態でその年度分が決まる税金だということです。
この2つを合わせると、「勧告を受けた状態のまま1月1日を迎えた年度分から、住宅用地の特例が外れる」という時期が導けます。言い換えると、勧告を受けたその瞬間に税額が変わるのではなく、次の1月1日をまたいで初めて反映されます。勧告から特例喪失までには、必ず1月1日という区切りが1回入る、と考えると分かりやすいです。
上がる前に必ず「勧告」の段階がある

税額が上がる前提として、いきなり勧告が来るわけではありません。空家法では、状態に応じて段階を踏むことになっています。
倒壊の危険があるなど周辺への影響が大きい「特定空家等」については、まず助言または指導があり、改善されないときに相当の猶予期限を付けて勧告、それでも従わないときに命令、最終的に行政代執行(行政が代わりに解体などを行い費用を所有者に請求する手続)へと進みます。このうち住宅用地の特例が外れるのは、2段階目の勧告を受けた時点です。
2023年(令和5年)の空家法改正で新たに設けられた「管理不全空家等」については、市町村長がまず指導を行い、改善されず特定空家になるおそれが大きいと認めるときに勧告できます。この管理不全空家も、勧告を受けると住宅用地の特例が外れる対象になりました。改正法は令和5年12月13日に施行されています。
いずれの場合も、指導や助言の段階では特例は続きます。特例が外れるかどうかの分かれ目は「勧告を受けたかどうか」で、そのうえで前の項目で見た1月1日の区切りが効いてくる、という二段構えです。
時系列で見る「勧告を受けてからいつの年度分か」
勧告を受けた時期によって、どの年度分から上がるかを並べると次のようになります。勧告が撤回されないまま1月1日を迎えることが前提です。日付は仕組みを示すための例です。
| 勧告を受けた時期 | 次に迎える賦課期日 | 特例が外れる年度 |
|---|---|---|
| 令和8年10月 | 令和9年1月1日 | 令和9年度分から |
| 令和8年12月末 | 令和9年1月1日 | 令和9年度分から |
| 令和9年1月2日以降 | 令和10年1月1日 | 令和10年度分から |
このように、同じ「勧告を受けた」でも、1月1日を境に反映される年度が1年ずれます。年末に勧告を受けた場合は数日後の1月1日で反映され、年明けすぐに勧告を受けた場合は翌々年度からになる、というイメージです。ここで確定的に言えるのは条文から導ける「勧告を受けた状態で1月1日を迎えた年度分から」というところまでで、勧告の出し方や個別の運用は市区町村によって異なります。実際に手紙が届いたときは、その書面に書かれている措置の段階(助言・指導なのか勧告なのか)と時期を、市区町村の担当窓口に確認してください。
上がってから動くと選べる出口が狭まる

税額が上がるのは勧告を受けた後ですが、勧告に至る前の助言・指導の段階で改善したり、その前に手放したりすれば、そもそも特例喪失の心配はなくなります。空き家を持ち続ける負担が重くなる前に、売却や解体といった出口を早めに検討しておくことが、結果的に費用を抑えることにつながります。
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よくある質問
空き家というだけで固定資産税は上がりますか
いいえ。空き家であるだけでは住宅用地の特例は続きます。市区町村から勧告を受け、その状態で1月1日を迎えた年度分から特例が外れて上がります。空き家だから自動で6倍になるわけではありません。
結局いつから上がるのですか
勧告を受けたまま1月1日を迎えた年度分からです。固定資産税の賦課期日が1月1日と定められているため、勧告を受けた瞬間ではなく、次の1月1日をまたいで反映されます。
何倍になりますか
200平方メートル以下の部分は課税標準が6分の1から元に戻るので最大6倍、それを超える部分は3分の1から元に戻るので3倍が目安です。ただし負担調整措置などがあり、単純に6倍ちょうどになるとは限りません。
勧告の前に何か通知はありますか
あります。特定空家等ならまず助言・指導、管理不全空家等ならまず指導があり、改善されないときに勧告に進みます。助言・指導の段階では特例は続きます。
管理不全の空き家でも対象になりますか
はい。2023年(令和5年)の空家法改正で、管理不全空家等も勧告を受けると住宅用地の特例が外れる対象になりました。改正法は令和5年12月13日に施行されています。
都市計画税も上がりますか
都市計画税にも住宅用地の軽減措置があり、住宅用地でなくなれば同様に影響します。ただし税率は市区町村ごとに異なるため、金額は各市区町村に確認してください。
参考・出典
- 地方税法(第349条の3の2 住宅用地の課税標準の特例、第359条 賦課期日)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226 (2026年9月時点)
- 総務省「固定資産税・都市計画税」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_11.html
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(第13条 管理不全空家等、第22条 特定空家等)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(概要)」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621960.pdf
- 国土交通省 改正空家法 関連ページ https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000138.html

