本記事にはプロモーション(PR)が含まれます。
親から相続した実家を、すぐ売る踏ん切りはつかないので「とりあえず人に貸せないか」と考える方は少なくありません。ところが築40年を超えた家は水回りが古く、不動産会社からは「全部直すと数百万円かかる」と言われ、いったいどこまで手を入れれば貸せるのかが分からず止まってしまいます。ここで先に結論を言い切ると、判断の軸は「安全と水回りなど生活の根幹にあたる部分は、貸主(家を貸す側)が修繕する義務を負うので直す。一方で内装の古さや使い勝手は、家賃を下げて現状のまま貸すことができ、直す義務まではない」という一本の線です。この記事では、その線をどこに引くかだけに絞って整理します。家賃をいくらに設定するかや、貸すより売った方が得かどうかは別のテーマなので、ここでは触れません。
貸すために最低限直すべき部分の線引き

「貸せる状態」とは、借主が普通に生活できる状態を指します。逆に言えば、生活できないレベルの不具合は貸す前に直す必要があり、古いだけ・見た目が悪いだけの部分は直さなくても貸せます。この違いは、法律上の修繕義務がどこまで及ぶかとほぼ重なります。
民法606条は、貸主は賃貸物の使用と収益に必要な修繕をする義務を負うと定めています(民法、令和の改正後の現行条文)。つまり雨漏り・給排水の詰まりや漏れ・トイレや浴室が使えないといった、住むこと自体を妨げる不具合は、貸した後も貸主が直さなければならない性質のものです。だからこそ、こうした部分は貸す前に直しておかないと、入居直後に修繕費が発生して結局は自分の負担になります。反対に、壁紙の日焼けや古い設備のデザインは、住むことを妨げないので直す義務の外にあり、家賃を下げて現状のまま引き渡す余地があります。
| 部位 | 状態 | 貸す前の扱い |
|---|---|---|
| 屋根・外壁・柱などの構造、雨漏り | 雨水が入る・傾きや腐食がある | 直す(安全と修繕義務の根幹) |
| 給排水・トイレ・浴室・給湯 | 水が出ない・流れない・漏れる | 直す(生活の根幹) |
| 電気・ガスの安全(配線の劣化、火災報知器) | 使用に危険がある・未設置 | 直す・設置する |
| 建具・鍵などの防犯 | 施錠できない・割れがある | 直す |
| 壁紙・床材・畳の日焼けや汚れ | 古い・見た目が悪いだけ | 現状貸しで可(家賃を下げる) |
| キッチンや設備のグレード | 古い型だが使える | 現状貸しで可(借主希望で改修も) |
広告この記事の結論:ラクウル(空き家買取)
直す費用を家賃で何年かけて回収できるかで貸すか売るかが変わります。その場でわかる査定額を確認しておくと、改修費と回収年数を比べる材料になります。
広告です。査定金額や対応エリアは公式でご確認ください。
![]()
直さないと貸せない部分:安全と水回り
最初に手をつけるべきは、住むこと自体を妨げる不具合です。具体的には、雨漏りや構造の腐食といった建物の安全に関わる部分、そして給排水・トイレ・浴室・給湯という水回りです。ここが機能しないと、そもそも入居できません。
安全に関わる部分
屋根や外壁からの雨漏り、柱や土台の腐食、シロアリ被害による強度低下は、放置すると建物全体の劣化を早め、借主の安全にも直結します。長く空き家だった家では、外から見て分からない範囲で進んでいることが多いので、貸し出す前に専門業者の点検を受け、生活に支障が出る箇所を先に直しておくことが前提になります。火災警報器のように、設置が求められている安全設備も貸す前に整えておきます。
水回りに関わる部分
長期間使っていない家は、配管の中の水(トラップの封水)が蒸発して下水の臭いが上がってきたり、パッキンが劣化して漏水したりします。通水してみて水が出ない・流れない・漏れるといった状態は、そのままでは貸せません。逆に、設備が古いだけで正常に使えるのであれば、無理に新品へ交換する必要はなく、現状のまま貸すという選び方ができます。
直さなくても貸せる部分:現状貸しとDIY型賃貸借

内装の古さや設備のグレードは、住むことを妨げないので、直さずに家賃を下げて貸す「現状貸し」が成り立ちます。この考え方を契約の形にしたものが、国土交通省が示すDIY型賃貸借です。国交省の定義では、DIY型賃貸借とは「借主(入居者)の意向を反映して住宅の改修を行うことができる賃貸借契約や賃貸物件」を指します(2026年9月時点・国交省公式サイト確認)。
国交省は平成28年4月に契約書式例とガイドブックを、平成30年3月には改定版の契約書式例と家主向けの手引きを公表しています。貸主が費用をかけて直す代わりに、借主が自分の好みで壁紙や設備に手を入れることを認め、その分だけ家賃を抑える、という組み立てです。空き家をそのまま貸したい所有者にとっては、初期費用を抑えつつ借り手を見つける現実的な方法になります。
借主の側から修繕が行われる場面についても、現在の民法は道筋を定めています。借主は、修繕が必要な場合に貸主へ通知したのに貸主が相当の期間内に修繕しないとき、または急迫の事情があるときは、自ら修繕できるとされています(民法607条の2、令和2年4月1日施行)。ただし、どの範囲の修繕を借主に委ね、費用をどちらが負担するのかは契約での取り決めが優先されるため、条文の当てはめには個別の確認が必要です。実際の運用は法令の原文(e-Gov)や専門家への相談で裏を取ることをおすすめします。
どこまで直すかの判断フロー
迷ったときは、次の順番で判断すると線を引きやすくなります。
- その不具合は「住むこと自体」を妨げるか。 妨げる(雨漏り・水が出ない・施錠できない等)なら、貸す前に直す。妨げないなら次へ。
- 安全や法令で求められる設備か。 火災警報器など求められるものは整える。それ以外なら次へ。
- 古い・見た目が悪いだけか。 そうであれば直さず、家賃を下げて現状貸しにできる。借主が自分で手を入れたい場合はDIY型賃貸借として改修範囲を取り決める。
この流れで「1と2に当たる部分だけ直す」と決めれば、フルリフォームを避けつつ貸せる状態にできます。全体を新品同様にしてから相場の家賃で貸すか、最低限だけ直して家賃を下げて貸すかは、直す費用を家賃で何年かけて回収できるかという計算で比べることになります。この手取りの比較で「貸すより売った方が早い」と判断する方も多く、その場合は別記事の空き家 売却の進め方で、仲介と買取の手取りと期間の違いを確認してください。
現状貸しの契約で決めておくこと

現状のまま貸すときにいちばん揉めやすいのが、退去時の原状回復(借りたときの状態に戻すこと)です。もともと古い状態で貸しているのに、退去時に「新品に戻せ」と求めると成り立ちません。国交省のDIY型賃貸借では、改修してよい範囲と、退去時に原状回復を求めるかどうかを、契約の時点で書面で取り決めることが前提になっています。借主が加えた改修を残してよいのか、撤去させるのかを先に決めておくことで、後のトラブルを避けられます。
貸すときの仲介手数料の特例
長く使われていない空き家を貸す場合、不動産会社に払う仲介手数料に特例があります。通常の貸借の媒介では、貸主・借主の双方から受け取る手数料の合計は借賃1か月分の1.1倍(税込)以内が原則です。これに対し、現に長期間使われていない、または今後も使われる見込みのない「長期の空家等」を貸す場合は、借主から受ける額が借賃1か月分の1.1倍以内であることを条件に、合計で借賃1か月分の2.2倍(税込)まで受け取れるとされています(2026年9月時点・国交省告示)。
たとえば家賃6万円で貸す場合、通常は双方合計の手数料上限が6万6千円ですが、長期の空家等の特例では最大で13万2千円まで認められる計算になります。空き家は手間がかかるため、この上乗せを認めることで貸しやすくする仕組みです。手数料が通常より高く提示されたときは、この特例の適用があるかを不動産会社に確認するとよいでしょう。
よくある質問
現状のままでも貸せますか。
雨漏りや給排水などの生活の根幹に問題がなければ、内装が古いままでも貸せます。古さや使い勝手は家賃を下げて調整し、借主が自分で手を入れることを認めるDIY型賃貸借という契約の形もあります。ただし住むこと自体を妨げる不具合は、貸す前に直す必要があります。
貸主が必ず直さないといけないのはどこですか。
民法606条は、貸主は使用と収益に必要な修繕をする義務を負うと定めています。雨漏り・構造の劣化・給排水やトイレ浴室が使えないといった、生活を妨げる不具合がこれにあたります。壁紙の日焼けなど住むことを妨げない古さは、この義務の外にあると考えられます。
借主が勝手に修繕したら費用は誰が払いますか。
民法607条の2は、貸主へ通知したのに相当の期間内に修繕されないとき、または急迫の事情があるときは借主が自ら修繕できるとしています。費用の負担は状況と契約の取り決めによって変わるため、改修範囲と費用負担を契約時に明記しておくことが重要です。個別の当てはめは専門家に確認してください。
リフォームして相場で貸すのと、直さず家賃を下げて貸すのはどちらが得ですか。
直す費用を、上げられる家賃で何年かけて回収できるかで比べます。回収に長い年数がかかるなら、最低限だけ直して家賃を下げる現状貸しの方が手元に残りやすいことがあります。空室の期間が長引くリスクも含めて判断してください。
現状貸しで退去時の原状回復はどうなりますか。
もともと古い状態で貸しているので、新品への回復を一律に求めることはできません。DIY型賃貸借では、改修してよい範囲と退去時の原状回復の要否を契約時に書面で取り決めることが前提とされています。残してよい改修と撤去させる改修を先に決めておくと、後の争いを避けられます。
貸すときの仲介手数料はいくらですか。
通常は貸主・借主の双方から受ける手数料の合計が借賃1か月分の1.1倍(税込)以内です。長期間使われていない空き家を貸す場合は、借主から受ける額が1.1倍以内であることを条件に、合計で借賃1か月分の2.2倍(税込)まで認められる特例があります(2026年9月時点)。
直しても借り手がつかない場合はどうすればよいですか。
立地や需要によっては、費用をかけて直しても借り手が見つからないことがあります。その場合は貸すことにこだわらず、売却で手取りを確保する道も比較の対象になります。貸す場合と売る場合の手取りと期間を並べて、どちらが自分の状況に合うかを見極めてください。
参考・出典
- 民法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 国土交通省「DIY型賃貸借」: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000046.html
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号、最終改正 令和6年国土交通省告示第949号): https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001750143.pdf

