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祖父が住んでいた家を、名義をそのままにして父が相続し、その父も亡くなった。いま手元に残ったのは古い一戸建てで、これを売ろうとして「相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除(譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例)は使えるのか」と調べ始めた。そんな方に向けた記事です。二度の相続(数次相続=一つの相続の後、片づく前後にさらに別の相続が重なること)が起きると、控除の要件をどちらの死亡を基準に当てはめるのかが見えにくくなります。
結論から言えば、判断の起点は一つです。この特例でいう「被相続人(亡くなって家を残した人)」が誰かを先に確定し、その人を基準に家屋の要件と居住の状況を当てはめるのが順序になります。数次相続では被相続人が祖父なのか父なのかで結論が変わり、条文の細部(この特例の根拠である租税特別措置法35条の適用関係)に踏み込む必要があるため、この記事では時系列で当てはめる型を示したうえで、最後は税務署か税理士への確認を前提に進めます。
数次相続とは|祖父の家を父が相続し、父も亡くなった型

数次相続とは、ある人が亡くなって相続が始まり、その遺産分割や名義変更が済まないうちに、相続人の一人がさらに亡くなって次の相続が重なる状態を指します。空き家でよく見るのは、次の流れです。
- 祖父が古い家に住んでいた
- 祖父が亡くなり、父がその家を相続した(父自身は別の場所に住んでいたことが多い)
- 登記や売却を進めないうちに父も亡くなり、いま自分(子・孫)が相続することになった
この型では、登記が祖父名義のまま止まっていることが珍しくありません。売却の前提として、祖父から父、父から自分へとつなぐ相続登記(不動産の名義を相続人に変える手続き)を済ませる必要がありますが、それは登記の話であって、3,000万円控除が使えるかどうかの判定とは別の論点です。まずは税金の要件を、誰を基準に見るのかから整理します。
空き家特例で最初に決めるのは「被相続人が誰か」
相続した空き家の3,000万円特別控除は、正式には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」です。国税庁の要件は、すべて被相続人が住んでいた家屋(被相続人居住用家屋)を軸に組み立てられています。家屋については、次の3つがそろっていることが条件です。
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと(分譲マンションのような登記でないこと)
- 相続の開始の直前において、被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
ここで効いてくるのが、被相続人を誰と見るかです。あなたがこの特例を使うとき、被相続人は原則としてあなたが直接相続した相手になります。祖父から父、父から自分という数次相続の型では、あなたにとっての被相続人は父です。すると3要件は「父が最後に住んでいた家か」「相続開始の直前に父以外は住んでいなかったか」という形で当てはめることになり、祖父の居住実態だけを見て判断すると結論を誤ります。
時系列を図にして判定する

数次相続は、誰がいつ亡くなり、そのとき家に誰が住んでいたかを一本の時間軸に並べると判定しやすくなります。同じ「祖父の家」でも、下の2つで結論が分かれます。
| パターン | 家に最後に住んでいた人 | 相続の流れ | あなたの被相続人 | 「被相続人が居住」要件の当てはめ |
|---|---|---|---|---|
| A 祖父だけが住み続けた家 | 祖父 | 祖父が死亡→父が相続(父は別居)→父が死亡→あなたが相続 | 父 | 父はこの家に住んでいない。原則として満たしにくい |
| B 父が引き継いで住んだ家 | 父 | 祖父が死亡→父が相続して居住→父が死亡→あなたが相続 | 父 | 父が最後に住んでいた。他に同居者がいなければ満たす可能性 |
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誰を被相続人として要件を当てはめるかの判定は自己判断が難しいため、専門家が在籍する相続の窓口に相談する方法もあります。
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判定の順序は次のようになります。
- あなたが相続した相手(被相続人)を確定する。数次相続なら、まずは父
- その被相続人が、売ろうとしている家に「亡くなる直前」まで住んでいたかを確認する
- その直前に、被相続人以外に住んでいた人がいなかったかを確認する
- 家屋が昭和56年5月31日以前の建築で、区分所有登記でないかを確認する
- 相続の時から売るときまで、その家を人に貸したり事業や自分の住まいに使ったりしていないかを確認する
パターンBのように父が実際に住み続けていた家であれば、要件を満たす可能性が出てきます。一方パターンAのように、祖父の死後は誰も住まず空き家のまま父が相続し、父はよそに住んでいたという場合、「被相続人(父)が住んでいた家」という前提が崩れ、そのままでは適用が難しくなります。
数次相続で3000万円控除が難しくなる理由
難しさの中心は、この特例が「亡くなったことで空き家になった家」を対象にしている点にあります。パターンAでは、家を空き家にしたのは祖父の死であって、父の死ではありません。父の死を起点に見ると、父はその家に住んでいなかったため、「被相続人の居住用家屋」という入り口の条件でつまずきます。
ただし、数次相続にはいくつかの分岐があり、たとえば祖父の遺産分割が終わらないうちに父が亡くなったケースや、父が生前にこの家に住み替えていたケースなど、事実関係によって当てはめが変わります。どの相続を起点に要件と期限を見るのかは、租税特別措置法35条とその通達、国税庁の質疑応答事例まで確認しないと確定できない部分があります。この記事では、canonicalに載っていない個別の当てはめについては断定しません。
税務署・税理士に確認する項目
次の点をメモにまとめ、家の登記事項証明書(登記の内容を証明する書類)と建築年がわかる資料を添えて相談すると、判定が早く進みます。
- この売却で被相続人を誰と見るか(父か、事情によっては祖父か)
- 被相続人が亡くなる直前まで、その家に一人で住んでいたと言えるか
- 祖父の遺産分割が父の死亡前に済んでいたか、未分割のままだったか
- 3,000万円控除の3年の期限を、どの相続の開始日から数えるか
- 被相続人が施設に入居していた期間がある場合、その扱い
- 相続登記(数次相続の名義変更)をどの順で済ませる必要があるか
可否は事実関係次第で変わるため、口頭ではなく資料をそろえて確認するのが安全です。税務署の窓口相談は無料で、判断が難しい場合は税理士に有償で見てもらう選択肢もあります。
手続き・期限・併用のルール

要件を満たすと見込める場合でも、期限と手続きは共通です。canonicalで確認できている数値は次のとおりです。
- 売却の時期は平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間で、控除額は最高3,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を相続した相続人が3人以上のときは2,000万円まで)
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること(数次相続でどの相続開始日を起点にするかは前項の確認事項)
- 売却代金が1億円以下であること
- 家屋を売る場合は一定の耐震基準を満たすこと。令和6年1月1日以後の譲渡なら、売却後その翌年2月15日までに耐震基準を満たすこととした場合や、家屋の全部を取り壊した(更地にした)場合も対象
- 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例(相続税の一部を取得費に足せる特例)とは併用できず、どちらかを選ぶこと
- 適用には確定申告が必要で、市区町村長が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」などを添付すること
売り方によって手取りと期間は変わります。古い空き家や訳あり物件をどう売るかは、空き家 売却の進め方(仲介と買取の違い)で全体像を確認できます。数次相続で名義や要件の判定に時間がかかる家は、状態を問わず引き取る買取業者に相談しておくと、期限を意識した段取りが立てやすくなります。
よくある質問
数次相続でも3,000万円控除は必ず使えますか
必ず使えるとは言えません。あなたにとっての被相続人が誰か、その人がその家に住んでいたかどうかで結論が変わります。祖父だけが住み、父は別居のまま亡くなった型では、そのままでは要件を満たしにくくなります。事実関係を整理して税務署か税理士に確認してください。
3年の期限はどちらの相続を基準に数えますか
相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、というのが基本の期限です。数次相続でどの相続開始日を起点とするかは事案によって扱いが分かれ得るため、この記事では断定せず、確認事項として整理しています。売却を急がず、先に起点を確定させてください。
家の登記が祖父名義のままでも売れますか
売却の前に、祖父から父、父から自分へとつなぐ相続登記が必要です。数次相続の登記は書類が増えやすいので、司法書士に依頼するか法務局で相談すると進めやすくなります。登記が済んでいるかどうかと、3,000万円控除が使えるかどうかは別の判定です。
相続人が3人以上のときの控除額はいくらですか
令和6年1月1日以後に行う譲渡で、家屋と敷地を相続または遺贈で取得した相続人が3人以上のときは、控除の上限が一人あたり2,000万円までになります。それ以外は最高3,000万円です。
取り壊してから売る場合も対象になりますか
令和6年1月1日以後の譲渡であれば、家屋が一定の耐震基準を満たすこととした場合のほか、家屋の全部を取り壊して更地にした場合も対象になり得ます。取り壊しの時期や証明のそろえ方は要件に沿って確認してください。
売却代金に上限はありますか
売却代金が1億円以下であることが条件です。共有で複数人が同じ家と敷地を売る場合など、代金の合計で判定される場面もあるため、金額が近いときは事前に確認しておくと安全です。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3202 譲渡所得の計算のしかた(総合譲渡・分離譲渡) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm

