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親が住んでいた実家を兄弟2人で相続し、共有名義(一つの不動産を複数人で持ち合う状態)のまま売ることにした。このとき最初に迷うのが、「被相続人の居住用財産を売ったときの3,000万円特別控除は、家全体で3,000万円なのか、それとも共有者が一人ずつ使えるのか」という点です。売却代金を持分で分けたあと、税金の計算でつまずくケースは少なくありません。
先に結論を言うと、この特別控除は共有者それぞれが自分の譲渡所得(不動産を売って得た利益)から差し引く仕組みで、要件を満たせば持分を持つ一人ひとりが最高3,000万円ずつ控除できます。ただし令和6年1月1日以後の売却では、家屋と敷地を相続で取得した相続人が3人以上になると、一人あたりの上限が2,000万円に下がります(2026年9月時点)。以下、判定の順番と計算例で具体的に確認していきます。
3,000万円控除は共有者ごとに使える(持分単位で判定する)

空き家を共有名義で売ると、売却代金は持分の割合に応じて各共有者に分かれます。たとえば持分が2分の1ずつなら、収入金額(売った金額のうち自分の取り分)も半分ずつです。譲渡所得は共有者ごとに「自分の収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて」計算し、確定申告も各自が行います。
被相続人の居住用財産を売ったときの特例(いわゆる空き家の3,000万円特別控除)は、この各自の譲渡所得から控除するため、要件を満たす共有者は一人につき最高3,000万円まで差し引けます。家全体で3,000万円という上限ではありません。
一方で、控除を使えるかどうかの判定のうち、家屋そのものに関する要件(後述の築年・同居者の有無など)は物件に共通します。ここで条件を外すと共有者全員が対象外になり得るため、「一人ずつ使える」ことと「物件の要件は全員に共通する」ことは分けて考える必要があります。
令和6年からは相続人3人以上で一人2,000万円に下がる
令和6年1月1日以後に行う譲渡では、被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合、控除の上限が一人あたり2,000万円までに引き下げられました。相続人が2人までであれば、従来どおり一人あたり最高3,000万円です。
ここでいう「相続人の数」は、家屋および敷地等を相続または遺贈により取得した相続人を数える表現になっています。誰を含めて数えるかは、家屋だけ・敷地だけを取得した人がいるといった個別事情で判断が分かれることがあるため、境界のケースは税務署または税理士に確認してください。
| 令和6年1月1日以後の譲渡 | 一人あたりの控除上限 |
|---|---|
| 家屋・敷地を相続した相続人が2人まで | 3,000万円 |
| 家屋・敷地を相続した相続人が3人以上 | 2,000万円 |
広告この記事の結論:ラクウル(相続不動産)
共有者ごとの持分計算や、令和6年から相続人3人以上で2,000万円に下がる要件の判定は複雑なため、相続の手続きをまとめて相談できる窓口もあります。
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持分ごとの控除額を計算してみる(数字は仮定)

相続人3人が持分3分の1ずつで相続し、総額9,000万円で売ったと仮定して、一人分の税額を計算してみます。以下の金額はあくまで説明のための仮定値で、実際の税額を保証するものではありません。取得費が分からないため、概算取得費(売った金額の5%を取得費とみなす方法)を使う前提です。
| 項目 | 金額(仮定) |
|---|---|
| 売却代金の総額 | 9,000万円 |
| 自分の持分(3分の1)に対応する収入金額 | 3,000万円 |
| 概算取得費(収入金額の5%) | 150万円 |
| 譲渡費用(仲介手数料など・仮定) | 150万円 |
| 譲渡所得 | 2,700万円 |
| 特別控除(相続人3人以上のため一人2,000万円) | 2,000万円 |
| 課税される譲渡所得 | 700万円 |
この課税譲渡所得700万円が長期譲渡(売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合)に当たるとすると、税率は所得税15%・住民税5%に復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)を加えたもので、合計20.315%(計算値)です。おおよその税額は約142万円になります。
仮に相続人が2人であれば、同じ譲渡所得2,700万円でも上限が一人3,000万円になるため、全額を控除でき課税は生じません。相続人が3人以上になると上限が2,000万円に下がり、差額の700万円に課税が及ぶ点が、共有で相続したときに金額へ効いてくる分かれ目です。
適用の可否を順番に確かめる判定フロー
共有者一人ひとりが控除を使えるかどうかは、次の順番で確かめると整理しやすくなります。物件に共通する要件(1から4の一部)と、各自で判定する要件が混在している点に注意してください。
- 売る家は昭和56年5月31日以前に建築されたもので、区分所有建物登記がされた建物でないか
- 相続開始の直前に被相続人が一人で住んでいたか(被相続人以外に居住していた人がいなかったか)
- 相続の時から譲渡の時まで、貸付け・居住・事業のいずれにも使っていないか
- 家屋を売る場合は耐震基準を満たすか、または取り壊して更地で売るか(令和6年以後は、買主が売却後に耐震改修または取壊しをする形でも認められます)
- 相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売るか
- 売却代金は1億円以下か
- 取得費加算など他の特例の適用を受けていないか
これらをすべて満たせば、共有者はそれぞれの確定申告で控除を適用します。控除額は一人あたり最高3,000万円、相続人3人以上なら一人あたり2,000万円です。
共有名義ならではの注意点

共有で売るときに特に気をつけたいのが「売却代金1億円以下」の要件です。共有で売る場合の1億円判定は、他の共有者の対価も関わることがあるため、合算の要否を含めて税務署または税理士に確認してください。持分ごとに考えて安心していると、全体では1億円を超えて対象外になることもあります。
手続き面では、この特例の適用に確定申告が必要で、市区町村長が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」などを添付します。書類は共有者それぞれが自分の申告に添える必要があります。また、相続税を納めた人が使える取得費加算(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)とは併用できないため、どちらが有利かを比べて選びます。
売却そのものの進め方、仲介と買取で手取りや期間がどう変わるかは空き家 売却の進め方で整理しています。共有では全員の合意が要るため、期限(相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日)から逆算して動くことが大切です。
共有者の足並みがそろわず売却がまとまらないときは、自分の共有持分だけを専門に買い取る業者へ相談する方法もあります。
よくある質問
3,000万円控除は共有者全員で3,000万円ですか、一人ずつですか
要件を満たせば、共有者それぞれが自分の譲渡所得から適用します。持分ごとに一人あたり最高3,000万円で、令和6年1月1日以後に相続人が3人以上のときは一人あたり2,000万円になります。
兄弟の一人が要件を満たさない場合、他の兄弟も使えませんか
特例の適用は各共有者ごとに判定するため、要件を満たす人だけが自分の分について控除を受けられます。ただし築年や同居者の有無といった物件そのものの要件は全員に共通するので、そこで外れると全員が対象外になり得ます。
「相続人3人以上で2,000万円」は誰を数えますか
被相続人居住用家屋および敷地等を相続または遺贈で取得した相続人の数で数えます。家屋だけ・敷地だけを取得した人がいる場合など、含めるかどうかは判断が分かれることがあるため、税務署または税理士に確認してください。
売却代金1億円以下は一人あたりですか、全体ですか
共有で売る場合の1億円判定は他の共有者の対価も関わることがあるため、合算の要否を含めて事前に税務署・税理士へ確認することをおすすめします。持分ごとの金額だけで判断しないほうが安全です。
取得費が分からないときはどうしますか
概算取得費として、売った金額の5%を取得費とすることができます。たとえば3,000万円で売れば150万円が取得費です。実際の取得費が分かる場合はそちらと比べて有利な方を使います。
相続税を払っています。取得費加算と両方使えますか
空き家の3,000万円控除と取得費加算は併用できません。どちらか一方を選ぶ形になるため、控除額を試算して有利な方を選びます。
いつまでに売ればよいですか
相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。制度自体の適用期限は令和9年12月31日までの譲渡です。共有では合意形成に時間がかかるので、早めの着手が安全です。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3202 譲渡所得の計算のしかた(土地や建物を譲渡したとき) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3258 取得費が分からないとき https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm

