空き家 相続放棄 できない|放棄しても残るもの

\u7a7a\u304d\u5bb6 \u76f8\u7d9a\u653e\u68c4 \u3067\u304d\u306a\u3044\uff5c\u653e\u68c4\u3057\u3066\u3082\u6b8b\u308b\u3082\u306e 相続・登記の手続き

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地方の実家を相続することになり、「築古の空き家と土地だけは要らないので、そこだけ相続放棄したい」と考える方は少なくありません。預貯金や自宅のマンションは引き継ぎ、管理も売却も面倒な空き家だけを手放せれば理想的に見えます。ところが、この「空き家だけ相続放棄」という発想は、制度のしくみ上そのまま通りません。判断の軸は3つです。第一に、相続放棄は財産を選べない包括的な手続きであること。第二に、あなたが放棄すると相続権が次の順位の親族へ移ること。第三に、放棄しても「現に占有している」間は保存義務が残ること。この3点を先に押さえれば、「放棄すれば一切関係なくなる」という誤解でつまずかずに済みます。

「空き家だけ相続放棄」ができない理由(民法939条)

空き家の畳に置かれた、埃まみれの段ボール箱と遺品
どれもまとめて引き継ぐ(イメージ)

相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の権利も義務も一切引き継がないという意思表示です。民法939条は、相続の放棄をした者はその相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなす、と定めています。つまり放棄をすると、空き家だけでなく、預貯金・株式・自宅・自動車などのプラスの財産も、借入金・未払いの税金などのマイナスの財産も、まとめて承継しないことになります。

ここが最頻出の誤解です。相続は「欲しいものだけ受け取り、要らないものだけ捨てる」という選択(いいとこ取り)ができません。プラスの財産だけを限度に引き継ぐ「限定承認」という別の手続きもありますが、これは相続人全員で家庭裁判所に申述する必要があり、空き家一つを外すために気軽に使えるものではありません。したがって「空き家は放棄したいが、他の遺産は普通に相続したい」という希望は、原則として両立しないと考えてください。

逆に言えば、他に受け取りたい財産がなく、負債や管理負担ばかりが目立つ相続では、放棄が現実的な選択肢になります。判断の入口は「空き家を切り離せるか」ではなく「この相続を丸ごと引き受けるか、丸ごと手放すか」です。

放棄すると相続権は次の順位の人へ移る(民法889条)

あなたが放棄をして相続人でなくなると、その相続分は消えてなくなるのではなく、次の順位の相続人へ移ります。相続の順位は、第1順位が子(およびその代襲相続人)、第2順位が直系尊属(父母・祖父母)、第3順位が兄弟姉妹(およびその子である甥・姪)です(民法889条ほか。配偶者は常に相続人になります)。

たとえば、子である相続人が全員放棄すると、相続権は亡くなった方の父母などの直系尊属へ、直系尊属もいなければ兄弟姉妹へと移っていきます。ここで問題になるのが、次に相続人になる親族が「自分が相続人になったこと」を知らないまま放置されるケースです。空き家の管理義務や固定資産税の話が、ある日突然その親族のもとへ回ってしまうことになりかねません。

放棄は自分だけで完結する手続きに見えますが、実際には親族間の連鎖を引き起こします。トラブルを避けるため、放棄を決めたら次順位にあたる親族へ事前に事情を伝え、必要なら一緒に対応を検討しておくことが実務上は重要です。

放棄しても残る「保存義務」——現に占有しているとき(民法940条)

古い障子の桟を丁寧に拭く手元
静かに手入れをする様子(イメージ)

放棄をすれば空き家との関係が即座に切れる、と考えるのは早計です。民法940条は、相続の放棄をした者が、放棄の時に相続財産に属する財産を「現に占有しているとき」は、次に相続人になる人または相続財産清算人へその財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存しなければならない、と定めています(令和5年4月1日施行の改正民法)。

この2023年の改正で、義務を負う人の範囲が明確になりました。改正前にあった「管理を継続しなければならない」という広い文言は削除され、現在は「現に占有している」放棄者だけが、「引き渡すまで」の間、保存義務を負う形に整理されています。したがって、遠方に住み、その空き家を一度も占有していなかった相続人は、放棄後に保存義務を負わないのが原則です。一方で、その家に住んでいた、鍵や家財を管理していた、といった事情があれば、放棄しても引渡しまでは最低限の保存が求められます。

判断フロー:自分に保存義務が残るか

  1. その空き家に住んでいる、または鍵・家財を管理して事実上占有しているか。はいなら、放棄しても引渡しまで保存義務が残ります。いいえ(遠方で一度も占有していない)なら、放棄後の保存義務は原則負いません。
  2. 次順位の相続人がいるか。いるなら、その人へ引き渡すことで義務は終わります。全員が放棄する見込みなら、後述の相続財産清算人への引渡しまでが区切りになります。
  3. 引渡し先が決まるまで、放置による損害(倒壊・落下物・火災など近隣への被害)が出ないよう、最低限の保存を続ける必要があります。

相続放棄の手続き・期限と、放棄で消えるもの・残るもの

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述します。この3か月を「熟慮期間」といい、期間内に判断できないときは家庭裁判所へ伸長を申し立てる方法もあります。何もせず3か月が過ぎると、原則として単純承認(すべて引き継ぐこと)をしたものとみなされる点に注意してください。

費用の目安は次のとおりです。

  • 収入印紙:申述人1人につき800円
  • 郵便切手:家庭裁判所ごとに定める額(別途必要)

費用そのものは小さいものの、いったん受理された放棄は撤回できないのが原則です。放棄後に価値ある財産が見つかっても取り戻せないため、財産の全体像を確認してから申述することが欠かせません。

放棄によって何が消え、何が残るのかを整理すると次のようになります。

区分 内容 放棄との関係
空き家・土地の所有権 要らない空き家を含む不動産 消える(初めから相続人でなかったとみなされる)
他のプラスの財産 預貯金・自宅・株式など 消える(空き家だけ残して相続はできない)
マイナスの財産 借入金・未払税など 消える(承継しない)
保存義務 倒壊・火災などを防ぐ最低限の管理 現に占有していれば引渡しまで残る(940条)
解体費用の負担 危険な空き家を壊す費用 状況により実質的に関わる場面がある(別途整理)

固定資産税の請求が放棄後に届く理由や、解体費用を誰が負担することになるかは、それぞれ事情が分かれるため、当サイトの個別記事で扱っています。放棄しても解体費や管理の実費に一切関わらないと言い切れない点だけ、ここでは覚えておいてください。

相続人全員が放棄した空き家の行き先

苔むした門が少し開いた、空き家の日本家屋の入り口に立つ人物の後ろ姿
門から中を覗き込む様子(イメージ)

次順位まで含めて相続人全員が放棄すると、その空き家には引き継ぐ人がいなくなります。この場合、利害関係人などの申立てにより、家庭裁判所が「相続財産清算人」(相続財産を整理・清算する人)を選任し、清算手続きが進められます。2023年施行の改正空家法では、市区町村長が財産管理人の選任を家庭裁判所に請求できるしくみも整えられ、相続放棄された空き家への対応が制度上補われました。現に占有していた放棄者は、この清算人へ財産を引き渡すことで、940条の保存義務から解放されます。

要らない土地の最終的な出口として「相続土地国庫帰属制度」(相続した土地を国に引き取ってもらう制度)もあります。ただしこの制度は、審査手数料が土地一筆あたり14,000円、負担金が原則20万円(市街化区域内の宅地などは面積に応じて算定)かかるうえ、建物が建っている土地は却下要件にあたるため、空き家は解体して更地にしなければ申請できません。解体費用は構造・延床面積・立地・残置物で大きく変わり全国一律の相場はないため、複数の業者から見積りを取って比べる必要があります。

放棄より前に、そもそも売却で手放せないかを検討する価値もあります。売却の全体像は空き家売却の進め方(仲介と買取の違い)で整理しています。訳あり物件や再建築不可でも買い取る業者に相談すれば、放棄せずに現金化できる場合があります。

よくある質問

空き家だけを相続放棄することはできますか。

できません。相続放棄は財産の一部だけを選んで手放す手続きではなく、放棄をすると初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。空き家を外して他の遺産だけ相続する、という形は原則として取れません。

放棄すれば空き家と一切関係がなくなりますか。

そうとは限りません。放棄の時にその空き家を現に占有していた場合は、次の相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで保存義務が残ります(民法940条)。遠方で一度も占有していなければ、放棄後の保存義務は原則負いません。

自分が放棄すると誰に相続権が移りますか。

次の順位の相続人へ移ります。第1順位の子が全員放棄すれば第2順位の直系尊属(父母など)へ、次いで第3順位の兄弟姉妹へと移っていきます。次に相続人になる親族へ事前に知らせておくと、後のトラブルを防げます。

相続放棄の期限と費用を教えてください。

自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ申述します。費用は収入印紙が申述人1人につき800円、ほかに郵便切手が必要です。3か月を過ぎると単純承認とみなされるおそれがあります。

相続人全員が放棄したら空き家はどうなりますか。

引き継ぐ人がいなくなるため、家庭裁判所が選任する相続財産清算人による清算手続きに進みます。改正空家法では市区町村長が財産管理人の選任を請求できるしくみも整えられています。現に占有していた人は清算人へ引き渡すことで保存義務を終えられます。

放棄と売却、どちらを先に考えるべきですか。

売却で手放せるなら、放棄で他の財産まで失わずに済みます。訳あり物件を扱う買取業者などに相談し、値がつくかを確かめてから、それでも引受先がない場合に放棄や国庫帰属を検討する順序が現実的です。判断が難しい場合は司法書士など専門家への相談をおすすめします。

参考・出典

  • 民法(e-Gov法令検索・第939条/第889条/第940条):https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)新制度の概要・ポイント」(相続放棄者の管理義務の見直し・令和5年4月1日施行):https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00499.html
  • 裁判所「相続の放棄の申述」(3か月以内・収入印紙800円):https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度」(審査手数料14,000円・建物がある土地は却下):https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」(原則20万円):https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html
  • 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(概要)」(市区町村長による財産管理人選任請求・令和5年12月13日施行):https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621960.pdf
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