相続放棄 空き家 解体費用|誰が払うことになるか

\u76f8\u7d9a\u653e\u68c4 \u7a7a\u304d\u5bb6 \u89e3\u4f53\u8cbb\u7528\uff5c\u8ab0\u304c\u6255\u3046\u3053\u3068\u306b\u306a\u308b\u304b 相続・登記の手続き

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遠方に住んでいて、亡くなった親の空き家をとても管理しきれない。だから相続放棄をした(相続する権利をまるごと手放す家庭裁判所の手続き)。それなのに後日、市町村から「解体費用を負担してほしい」と言われたらどうしよう。あるいは、その家が借地(他人の土地を借りてその上に建てた家)で、地主から「更地にして返してほしい」と迫られている。相続放棄と解体費用の関係は、この「占有しているか」「放棄が有効に済んでいるか」「借地かどうか」の三点で結論が分かれます。

先に結論をお伝えします。相続放棄が家庭裁判所で受理され、あなたがその空き家を現に占有していなければ、あなたは所有者ではなくなるため、解体費用を負う立場にはならないのが原則です。負担が回ってくるのは、放棄が無効になっている場合、放棄後も現に占有している場合の一部、そして解体を自治体が肩代わりする「行政代執行」が行われた場合に限られます。順に、お金の出どころだけを切り分けて見ていきます。

相続放棄すれば解体費用を負わないのが原則である理由

机に並べられた書類と、それを扱う手の様子
手続きを進める手元(イメージ)

相続放棄をすると、その人は「初めから相続人でなかったもの」として扱われます。つまり空き家の所有権も、解体費用を含む一切の債務も引き継ぎません。ここが出発点です。解体には費用がかかりますが、その費用を負担するのは、あくまでその建物を所有している人か、法律で負担者と定められた人です。所有者でなくなった以上、原則としてあなたに解体費の請求は向きません。

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述して行います。費用は申述人1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手です。この手続きが受理されて初めて、放棄の効果が生じます。逆に言えば、3か月を過ぎたり、後述する「してはいけない行為」をしてしまうと、放棄そのものができない、または無効になり、原則が崩れます。

例外1 「現に占有」していると残る保存義務(民法940条)

2023年(令和5年)4月1日に施行された改正民法940条は、相続放棄をした人の義務をこう定めています。放棄の時に相続財産を「現に占有しているとき」は、相続人または相続財産清算人(相続財産を管理・清算するために選ばれる人)に引き渡すまでの間、「自己の財産におけるのと同一の注意」をもってその財産を保存しなければならない、というものです。

ここで押さえたいのは二点です。第一に、義務を負うのは「現に占有している」放棄者だけです。改正前にあった「管理を継続しなければならない」という広い文言は削除され、遠方に住んでいて一度もその家に住んでおらず、鍵も持っていないような相続人には、この保存義務は生じません。第二に、これは「保存」の義務であって、「解体費用を出す」義務ではありません。雨漏りや不法侵入を放置しない、引き渡すまで現状をひどく悪化させない、という管理上の注意にとどまり、自腹で建物を取り壊す義務まで課すものではないのが条文の建て付けです。占有している場合は、相続財産清算人の選任などを進めて、できるだけ早く引き渡すことが負担を切る道になります。

例外2 行政代執行の費用は「所有者」に請求される

つたが絡まり苔むした古い木塀と家屋
朽ちゆく家屋がもたらすもの(イメージ)

もう一つの例外が、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)に基づく行政代執行です。危険な空き家について、市町村長は次の段階を踏みます。まず助言・指導、改善されなければ相当の猶予期限を付けた勧告、それでも従わなければ命令、そして命令を履行しないときに、自治体が所有者に代わって解体などを行う行政代執行です(第22条9項)。この代執行にかかった費用は、所有者が負担します。徴収は行政代執行法に基づき、税金の滞納処分と同じ方法で強制的に取り立てられます。

ここが誤解されやすい点です。「代執行費用は所有者負担」なので、有効に相続放棄をして所有者でなくなっていれば、その費用があなたに請求されることはありません。請求が向かうのは、放棄が無効で所有者のままの人、または放棄後も所有者として残っている人です。所有者を確知できないときの代執行(10項)や、災害等で命令のいとまがないときの緊急代執行(11項)の仕組みも用意されていますが、いずれも費用の負担者は「所有者」であって、正当に相続を手放した人ではありません。なお、命令に違反した者には50万円以下の過料、報告を拒むなどした者には20万円以下の過料という制裁もありますが、これも命令の名宛人(所有者等)に対するものです。

結局だれが解体費用を払うのか(判断フロー)

お金の出どころを、状況ごとに整理します。

状況 解体費用の負担 根拠・理由
相続放棄が受理され、占有もしていない 負担しない 所有者でなくなるため。代執行費用も所有者に請求される
相続放棄は受理されたが、現に占有している 解体費そのものの当然負担ではない 民法940条は引渡しまでの「保存義務」。取り壊す義務ではない
相続放棄が無効(後述の処分をした等) 所有者として負担しうる 放棄の効果が生じず、相続人=所有者のまま
相続人全員が放棄した 相続財産清算人・最終的に国庫が処理 所有者が不在となり、清算・国庫帰属の手続きへ

条件を順にたどる

  1. 相続放棄は家庭裁判所で受理されましたか。3か月以内に手続きし、次項の「してはいけない行為」をしていないか。ここが未了・無効なら、あなたは相続人(=所有者)として負担側に立ちます。
  2. 受理された。あなたはその空き家を現に占有していますか。占有しているなら、引き渡すまでの保存義務は残ります。ただし解体費の当然負担ではありません。占有していないなら、保存義務も生じません。
  3. 相続人全員が放棄したなら、最終的な処理は相続財産清算人の選任や相続土地国庫帰属制度(要件を満たせば土地を国に引き取ってもらう制度)などに委ねられます。2023年の空家法改正で、市区町村長が相続放棄された空き家について財産管理人の選任を家庭裁判所に請求できる仕組みも加わりました。

注意したいのは、相続放棄を無効にしてしまう行為です。相続財産である家財を売り払う、預貯金を私的に使うといった「処分」に当たる行為をすると、法定単純承認(相続を承認したとみなされること)となり、放棄が認められません。良かれと思って自分で解体を手配した場合も、財産の処分と評価されて放棄できなくなる恐れがあります。放棄を予定しているなら、解体や家財の処分に自分から手をつけないことが肝心です。

借地の上に建つ空き家は別問題になる

亡くなった方が他人の土地を借りて(借地権を持って)建てた家の場合、話は少し複雑になります。相続放棄をすれば、その建物も借地権も相続しませんから、あなた個人が地主に対して解体費や原状回復(更地にして返すこと)の責任を負うわけではありません。ここまでは自己所有地の空き家と同じです。

一方で、相続放棄をしない場合は、地主との賃貸借契約の問題が別に絡んできます。借地の契約が終了する際には、借主側に原状回復(建物を撤去して土地を返す)を求められることがある一方、借地借家法には、契約終了時に借主が地主へ建物を買い取るよう請求できる制度もあります。どちらが適用され、解体費用が誰の負担になるかは、契約の種類・存続期間・地主との合意によって変わり、一般論だけで断定できません。借地の空き家は、放棄する・しないを決める前に、地主との契約内容を確認し、司法書士や弁護士など専門家に相談することを強くおすすめします。金額や適用条件は個別の契約次第です。

放棄する前に確認すること・しないという選択

古民家の土台に生えた苔と木材
風化した家の土台と生命力(イメージ)

相続放棄は解体費用を切り離せる有効な手段ですが、その空き家だけでなく、預貯金・他の不動産・請求できる債権まですべての相続を手放すことになります。プラスの財産が多い場合は、放棄が損になることもあります。空き家の解体費や固定資産税を避けたいという一点だけで放棄を決める前に、遺産全体を見て判断してください。

放棄せずに引き継いだうえで、解体して更地にしてから土地を手放す、あるいは建物付きのまま買い取ってもらう、という道もあります。再建築不可や残置物ありの空き家でも買い取る専門業者はあり、解体せずに現況のまま引き取ってもらえれば、解体費を自分で用意せずに済むこともあります。売る方向で検討するなら、仲介と買取で手取りと期間がどう違うかを先に押さえておくと、選択を誤りにくくなります。手放し方の全体像は空き家 売却の進め方で確認できます。

よくある質問

相続放棄をしたのに、市町村から解体費用の請求書が届きました。払う必要はありますか。

相続放棄が家庭裁判所で受理され、あなたがその空き家を占有していないのであれば、あなたは所有者ではなく、解体費や代執行費用を負う立場にありません。相続放棄申述受理通知書などで放棄の事実を示し、請求の根拠を確認してください。放棄が無効とされる事情がある場合は別なので、心当たりがあれば専門家に相談してください。

放棄しても「管理義務が残る」と聞きました。解体費も払うのですか。

2023年施行の民法940条で残るのは、放棄の時に「現に占有している」場合の「保存義務」です。これは引き渡すまで財産をひどく悪化させない管理上の注意であって、自腹で解体する義務ではありません。占有していない相続人には、この義務自体が生じません。

相続人全員が放棄したら、その空き家はどうなりますか。

所有者が不在になるため、相続財産清算人の選任や相続土地国庫帰属制度などの手続きで処理されます。国庫帰属では建物がある土地は申請できず、更地にする必要がある点に注意してください。2023年の空家法改正で、市区町村長が相続放棄された空き家の財産管理人選任を請求できる仕組みも設けられました。

放棄する前に、自分で家財を片づけたり解体したりしてもいいですか。

おすすめしません。相続財産の処分に当たる行為をすると法定単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなる恐れがあります。放棄を予定しているなら、解体や家財の処分に自分から手をつけないでください。

借地に建つ空き家です。地主に更地で返さないといけませんか。

相続放棄をすれば、建物も借地権も引き継がないため、あなた個人が地主に原状回復や解体費を負う立場ではなくなります。放棄しない場合は、契約終了時の原状回復や建物買取請求など借地借家法の問題が絡み、負担者は契約内容によって変わります。契約書を確認し、専門家に相談して判断してください。

行政代執行の費用は、どのくらい強く取り立てられますか。

空家法で代執行費用は所有者負担と定められ、行政代執行法に基づき、税金の滞納処分と同じ方法で強制的に徴収されます。ただし請求されるのは所有者であり、有効に相続放棄をして所有者でなくなっていれば、あなたに向かうことはありません。

参考・出典

  • 民法 第940条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • 法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(新制度の概要)」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00499.html
  • 空家等対策の推進に関する特別措置法 第22条・第30条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127
  • 国土交通省「空家等対策特別措置法の改正について(概要)」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621960.pdf
  • 裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
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