実家の空き家 売却|親の家を売る手順と兄弟の合意

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親が亡くなり、誰も住まなくなった実家。地元を離れて暮らす長男、近くに住む次女、遠方の三男の三人で相続したものの、「いつか片づけよう」のまま数年が過ぎ、固定資産税と管理の手間だけがのしかかっている。こうした場面で多いのは、売却そのものより「誰が動くか」「名義をどうするか」で兄弟の話が止まることです。

結論から言えば、実家の空き家を売る手順は「名義を確定してから売る」が鉄則です。相続した不動産は、遺産分割協議で取得者を決め、相続登記(不動産の名義を相続人に変える手続き)を済ませてからでないと売却できません。そして兄弟間の合意は、口約束ではなく遺産分割協議書という書面に残すこと。この二つを先に固めると、売却は残り半分の作業になります。

実家が空き家になったら、売却まで何から動くか

古民家の和室で、机の上に広げられた書類を眺める手元。
実家を受け継ぐ大切な手続き(イメージ)

やるべきことには順番があります。順番を飛ばすと、あとで登記や税金の手続きが二度手間になります。実家の空き家を売却するまでの流れは、大きく次の順です。

  1. 相続人を確定する(戸籍を集め、法定相続人が誰かを確認する)
  2. 遺産分割協議で「誰が実家を取得するか」を決め、遺産分割協議書に全員が署名・押印する
  3. 相続登記を申請し、名義を相続人へ移す
  4. 売却方法を選ぶ(仲介か買取か)
  5. 売却し、代金を取り決めどおり分ける
  6. 譲渡所得が出れば翌年に確定申告する

ここで見落としやすいのが、被相続人(亡くなった親)の名義のままでは家も土地も売れないという点です。買主への所有権移転登記ができないため、先に相続人へ名義を移す必要があります。

兄弟で「誰の名義にするか」を先に決める

実家を兄弟で相続するとき、名義の付け方は大きく二つに分かれます。ひとつは代表となる一人の単独名義にする方法、もうひとつは兄弟全員の共有名義にする方法です。売却を前提にするなら、共有名義のまま話を進めるのは避けたほうが無難です。

共有名義のまま売ろうとすると起きること

共有名義の不動産は、売却の意思決定に共有者全員の合意が要ります。一人でも「まだ売りたくない」「価格に納得できない」と言えば契約は進みません。契約日には全員が実印と印鑑証明を用意して立ち会う(または委任状を出す)必要があり、遠方の兄弟がいると日程調整だけで数週間かかることもあります。相続後に誰かがさらに亡くなると持分がその子へ移り、共有者が雪だるま式に増えて、話がまとまらなくなる例もあります。

売却代金の分け方の三つの型

兄弟で分ける方法には次の三つがあります。実家を売って現金で分けるなら、換価分割が最も公平で後腐れがありません。

分割方法 内容 実家売却との相性
現物分割 実家は誰か一人、預金は別の一人、というように財産ごとに分ける 取得した一人が単独名義にして売れる。他の兄弟に渡す財産があるときに向く
代償分割 一人が実家を取得し、他の兄弟へその持分相当の現金を支払う 取得者に支払い原資が要る。実家に住み続ける相続人がいる場合に向く
換価分割 実家を売却し、得た現金を持分に応じて分ける 誰も住まない空き家を売って清算する場合に最も向く。代表者一人の名義にまとめてから売る運用が実務では多い

換価分割では、便宜上いったん代表相続人の単独名義にして売却し、その代金を協議書のとおり分けるやり方が使われます。この場合は「売却して代金を分ける目的での取得である」ことを遺産分割協議書に明記しておくと、代表者が全額を受け取ったとみなされる誤解や、贈与と扱われる懸念を避けやすくなります。

相続登記は3年以内に済ませる

役所で不動産の地図を広げて確認する人
不動産の情報を確認する様子(イメージ)

相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務になりました。「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」に申請しなければならず、正当な理由がないのに怠ると10万円以下の過料の対象になります(法務省)。制度開始前に発生した相続で未登記のものは、2027年(令和9年)3月31日までが期限です。

登記の際にかかる登録免許税は、固定資産税評価額×0.4%です。たとえば実家の土地建物の評価額が合計1,000万円なら、1,000万円×0.4%=4万円が目安になります。土地については価額100万円以下の場合、2027年(令和9年)3月31日まで登録免許税が免除されます(国税庁 No.7191)。

なお、相続放棄をした場合でも、放棄の時にその家を現に占有していた人は、引き渡すまで保存する義務を負います(民法940条、2023年改正)。放棄すれば何もしなくてよいわけではない点は、相続放棄を扱う別記事で詳しく触れています。

売る方法を選ぶ

名義が固まったら、次は売り方です。実家の空き家を売る手段は、時間をかけて高値を狙う仲介と、早く確実に現金化する買取に大きく分かれます。兄弟が遠方に散らばっていて内見の立ち会いが難しい、残置物(家財道具の残り)が多い、再建築不可などの事情があるときは、買取のほうが手続きが軽く済むことがあります。仲介と買取で手取りと期間がどう違うかは、空き家 売却の進め方の記事で費用と期間の比較表とあわせて整理しています。

訳あり物件や共有持分を専門に買い取る事業者では、査定は無料で、買取の場合は仲介手数料もかからないと公式サイトに記載があります。相談から3営業日以内に査定金額を提示し、金額に納得できれば最短で翌営業日に買取が完了するとしています(2026年9月時点・公式サイト確認)。共有名義・空き家・再建築不可などをまとめて扱えるため、兄弟間で早く清算したいケースで選択肢になります。

売却代金を兄弟でどう分けるか(計算例)

売れた金額をそのまま人数で割るわけではありません。売却にかかった費用を引き、譲渡所得(売却益)が出れば税金も差し引いた「手取り」を分けます。実家を1,500万円で売った場合の明細を見てみます。

項目 金額の目安 根拠
売却代金 1,500万円 ―
取得費(概算取得費) 75万円 取得費が不明なとき、売却額の5%を取得費にできる(国税庁 No.3258)
仲介手数料(上限) 約56.1万円 200万円×5.5%+200万円×4.4%+1,100万円×3.3%=56.1万円(税込・国交省告示の区分計算)
印紙税(軽減後) 1万円 1,000万円超5,000万円以下の契約書(国税庁 No.7108)

この場合の譲渡所得は、1,500万円−75万円−(56.1万円+1万円)=約1,367.9万円です。相続した空き家の所有期間は、原則として親(被相続人)が取得した日から通算するため、親が長く住んでいた家であれば長期譲渡所得(所有期間5年超)に当たるのが一般的です。長期の税率で計算すると、約1,367.9万円×20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税=所得税額の2.1%)で、税額はおよそ277万円になります。所有期間5年で税率が倍近く変わる分かれ目は、税金を扱う別記事で確認できます。

一方、一定の要件を満たせば「相続した空き家の3,000万円特別控除」で譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける制度があり、これが使えれば上記の譲渡所得は控除内に収まって課税されません。ただし相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることなど条件が細かく、家屋の建築年や耐震・取壊しの要件もあります(国税庁 No.3306)。使えるかどうかは別記事で10項目に分けて確認しています。手取りを兄弟で分けるのは、この税金まで差し引いたあとの金額です。

「今すぐ売る」判断はどこで下すか

苔むした古い縁側の手すり
風化した縁側が物語る(イメージ)

「今すぐ実家を売りなさい」という言葉が広まったのは、空き家を持ち続けるほど費用と手間が積み上がるからです。売る・持つの判断は、次の条件で切り分けると迷いにくくなります。

  • 誰も住む予定がなく、賃貸や活用の具体案もない → 売却へ進む
  • 相続の開始から3年目の年末が近い → 3,000万円特別控除の期限があるため、売却を急ぐ判断材料になる
  • 兄弟の誰かが住みたい・使いたいと明確に言っている → 代償分割で取得者を一人に絞る
  • 建物が古く傷みが進み、近隣から苦情が出始めている → 放置で管理不全の指摘を受ける前に、売却か解体の検討を早める
  • 兄弟の合意が固まらない → まず遺産分割協議を優先し、名義を確定させてから売却に入る

迷ったときの原則は「維持費と将来の値下がり」対「売却で得られる手取り」を並べて比べることです。空き家は年々増え続けており(総務省の2023年調査で全国の空き家は900万2千戸、空き家率13.8%と過去最高)、田舎の一戸建てほど時間の経過とともに買い手が付きにくくなる傾向があります。動けるうちに名義を整え、選択肢を確保しておくことが、結果として手取りを守ることにつながります。

よくある質問

親名義のままでは実家を売れませんか

売れません。買主への所有権移転登記ができないため、先に遺産分割協議で取得者を決め、相続登記で相続人へ名義を移す必要があります。名義変更は2024年4月から3年以内の申請が義務化されています。

兄弟の一人が売却に反対しています。どうすればよいですか

共有名義のままでは全員の合意がないと売却できません。まずは遺産分割協議で、代償分割(一人が取得し他へ現金を渡す)や換価分割(売って分ける)のどの型にするかを話し合うことになります。協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用する道もあります。

取得費が分からないと税金で不利になりますか

購入時の契約書などが見つからず取得費が不明なときは、売却額の5%を概算取得費として使えます(国税庁 No.3258)。ただし実際の取得費のほうが高いことも多いため、古い契約書や領収書は探しておくと譲渡所得を圧縮できる場合があります。

相続してから何年以内に売ると有利ですか

相続した空き家の3,000万円特別控除は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却が条件のひとつです(国税庁 No.3306)。この期限を過ぎると大きな控除が使えなくなるため、売る意思があるなら早めに動くのが有利です。

換価分割で代表者一人の名義にすると、その人だけに税金がかかりますか

売却して分ける目的での取得であることを遺産分割協議書に明記しておけば、譲渡所得は実際に代金を受け取る持分に応じて各相続人に配分して申告するのが原則です。書面がないと課税や贈与の扱いで誤解を招くことがあるため、目的を協議書に残しておくことが大切です。

残置物が多くて片づけられません。そのままでも売れますか

家財が残ったままでも買い取る事業者があります。訳あり物件を扱う買取では、空き家やゴミ屋敷、共有持分などをまとめて扱えると公式サイトに記載があります(2026年9月時点・公式サイト確認)。仲介で高値を狙う場合は片づけや解体を求められることもあるため、手間と手取りを比べて選びます。

参考・出典

  • 法務省 相続登記の申請義務化 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
  • 国税庁 No.7191 相続による所有権の移転登記に対する登録免許税の免税措置 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
  • 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(総合課税) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
  • 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
  • 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
  • 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 国税庁 No.7108 不動産の譲渡・消費貸借等に関する契約書に係る印紙税の軽減措置 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
  • 国土交通省 宅地建物取引業者が受けることができる報酬の額(告示第1552号) https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001750143.pdf
  • 民法 第940条(相続の放棄をした者による管理) e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • 総務省 令和5年住宅・土地統計調査 基本集計結果 概要 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf
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