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親から相続した田舎の家に買い手がつかず、「0円でもいいから引き取ってほしい」と掲示板やマッチングサイトに出したところ、受け取りたいという人が見つかった。ここで「これで手放せる」とほっとしてしまう方は少なくありません。ところが無償で渡すという行為そのものが、渡す側と受け取る側の双方に税金と手続きの費用を発生させます。売買のように代金が入らないのに、税と費用だけが動くのが0円物件の落とし穴です。
結論から言えば、無償で渡す前に確認すべき基準は二つです。第一に「誰に渡すか(個人か法人か)」で課される税の種類と、税を負担する人が変わること。第二に「登記費用と引き渡し後のトラブルの責任を、どちらがどこまで負うか」を渡す前に書面で決めておくこと。この二点を曖昧にしたまま名義を移すと、後から思わぬ請求やもめごとが起きます。引き取り手の探し方そのものは別記事に譲り、本記事は渡した後に起きることに絞って整理します。
引き取り手が見つかっても、その先に費用と税が動く

0円物件を手放したい動機の多くは、持ち続けるかぎり固定資産税などの負担が続くことにあります。固定資産税は標準税率が課税標準額の1.4%で、課税標準額が土地30万円・家屋20万円のいずれも未満であれば課税されません(総務省)。逆に言えば、この免税点を超える評価額の家や土地は、住んでいなくても毎年課税され続けます。だからこそ「タダでも渡したい」という判断が生まれます。
しかし無償譲渡は、法律上は「贈与」という財産の移転です。代金のやりとりがなくても、財産が人から人へ動けば課税の対象になり得ます。しかも税の中身は、渡す相手が個人か法人かで大きく変わります。まずは無償で渡すときに動くお金の全体像を、誰が負担するかとあわせて押さえておきます。
| 動くお金・責任 | 主に負担する人 | 中身 |
|---|---|---|
| 贈与税 | 受け取る個人 | 受け取った財産の評価額に応じて課税(国税庁 No.4402) |
| みなし譲渡所得課税 | 渡す個人(相手が法人のとき) | 時価で売ったとみなして渡した側に課税(所得税法59条・国税庁 No.3105) |
| 登録免許税(所有権移転登記) | 通常は受け取る側/協議で分担 | 登記名義を移すためにかかる税 |
| 司法書士報酬 | 協議で分担 | 移転登記の書類作成・申請の代行費用 |
| 契約不適合・境界・残置物の対応 | 契約の定め次第 | 引き渡し後に判明した不具合や近隣との争いの処理 |
広告この記事の結論:ラクウル(相続不動産)
無償で渡す場合も、贈与税やみなし譲渡所得課税、登記費用の負担をどちらが持つかを事前に決めておく必要があります。こうした相続の手続き全般を窓口にまとめて相談する方法もあります。
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この表のうち、金額の目安がその物件の評価額や条件で変わる項目については、後の各章で「どこで決まるか」を説明します。
個人へ渡すと、受け取った人に贈与税がかかる
個人から個人へ不動産を無償で渡した場合、原則として贈与を受けた側(もらった人)に贈与税がかかります(相続税法、国税庁 タックスアンサー No.4402)。「タダでもらったのに税金がかかるのか」と驚かれることが多いのですが、贈与税は財産をもらった事実に対して課される税なので、代金を払っていなくても対象になります。
贈与税の額は、もらった不動産の「評価額」を基礎に計算します。土地は路線価などをもとに評価し、建物は固定資産税評価額などをもとに評価するのが基本です(この評価の考え方は空き家の相続税評価と共通します)。したがって、見た目は古く価値がなさそうな家でも、土地の評価額が一定額を超えれば、受け取った人に税負担が生じることがあります。
具体的な税率や、非課税となる範囲(毎年一定額までの基礎控除)などの数値は、国税庁の最新の案内で確認する必要があります。本記事では税額の試算は行いませんが、受け取る側が「もらっただけで課税されうる」という点は、渡す前に必ず相手に伝えておくべきです。
法人へ渡すと、渡した側にみなし譲渡所得課税が起きうる

渡す相手が個人ではなく法人(会社やNPOなど)の場合は、課税の向きが逆になります。個人が法人へ資産を無償または著しく低い価額で譲渡したときは、時価で譲渡があったものとみなして、渡した側(あげた人)に譲渡所得の課税が及び得ます(所得税法59条、国税庁 タックスアンサー No.3105)。代金を一円ももらっていないのに、渡した側に税金が発生しうるという点が、個人間の贈与と大きく異なります。
この「みなし譲渡」で使われる譲渡所得の税率は、その不動産の所有期間で分かれます。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える長期の場合は所得税15%・住民税5%に復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が加わり、5年以下の短期の場合は所得税30%・住民税9%に復興特別所得税が加わります(国税庁 No.3208・No.3211)。なお相続で取得した空き家は、亡くなった方の取得日を引き継いで所有期間を数えるため、相続直後に手放しても長期に該当することが多くなります(国税庁 No.3270)。
本記事では税額の試算はしませんが、「善意で法人に無償で渡したら、あげた自分に課税された」という事態は現実に起こり得ます。相手が法人格を持つかどうかは、渡す前に必ず確認してください。判断が難しいときは税理士への相談をおすすめします。
登記の費用と、引き渡し後のトラブルを誰が負担するか
名義を移すには、法務局で所有権移転登記を行います。ここで登録免許税と、手続きを依頼する場合の司法書士報酬がかかります。売買であれば「登記費用は買主負担」といった慣行がありますが、0円での無償譲渡ではこうした前提が通用しないため、どちらがいくら負担するかを渡す前に取り決めておかないと、引き渡し直前になって費用の押し付け合いになりがちです。
さらに見落とされやすいのが、引き渡した後のトラブルです。無償で渡すからといって「現状のまま、いっさい責任は負わない」と口約束で済ませると、後から雨漏りや白蟻、地中の埋設物、隣地との境界の食い違いなどが判明したときに、渡した側へ苦情や損害の請求が向かうことがあります。残置物(前の所有者の家財や不用品)の撤去を誰がするかも典型的な火種です。無償であっても、契約書に「引き渡す状態」「不具合が見つかったときにどう扱うか」「残置物の処理はどちらが行うか」を明記しておくことが、後々の安全につながります。
0円で渡す前提でも、まずは空き家売却の進め方(仲介と買取の違い)を一度確認し、そもそも売れる余地がないかを見きわめてから無償譲渡に進むと、判断を誤りにくくなります。
無償で渡す前に決めておくこと(判断の順番)

タダで手放したいときほど、次の順番で確認すると税と費用の見落としを防げます。
- 渡す相手は個人か法人か。個人なら受け取る側に贈与税、法人なら渡す側にみなし譲渡所得課税がかかり得ると理解する。
- 対象の土地・建物のおおよその評価額を把握する。評価額が高いほど、受け取る側の税負担も大きくなる。
- 登録免許税・司法書士報酬を誰がどれだけ負担するかを、書面で先に決める。
- 引き渡す状態と、不具合・残置物・境界の責任範囲を契約書に明記する。
- そもそも売却(買取査定)で手放せないか、無償譲渡と比べてから決める。
もし引き取り手が最後まで見つからず、更地の土地だけが残る場合には、相続した土地を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度という出口もあります。この制度では審査手数料が土地一筆あたり14,000円、負担金は原則として面積にかかわらず20万円かかります(法務省)。ただし建物が建っている土地は申請の却下要件にあたるため、家を解体して更地にしなければ申請できません。無償で誰かに渡す場合も、国に返す場合も、「タダでも実費と手間はかかる」という点は共通しています(2026年9月時点)。
よくある質問
0円で渡すのに、なぜ税金がかかるのですか。
税金は「代金を受け取ったかどうか」ではなく「財産が移転したかどうか」に着目して課されるためです。個人から個人へ無償で渡せば受け取った側に贈与税、個人から法人へ渡せば渡した側にみなし譲渡所得課税が生じ得ます(国税庁 No.4402・No.3105)。無償だから非課税とは限りません。
贈与税は渡す側と受け取る側のどちらが払うのですか。
個人間の贈与では、原則として財産をもらった側(受け取る個人)が贈与税を納めます。渡す側が「もらう人にこの税がかかる」ことを事前に伝えておかないと、名義を移した後で受け取った人がもめる原因になります。
相手が空き家バンクや自治体、法人の場合も同じですか。
相手が法人(会社・NPOなど)であれば、渡した個人の側にみなし譲渡所得課税が及び得る点で個人間とは扱いが変わります(所得税法59条・国税庁 No.3105)。相手の法人格の有無で税の向きが変わるため、渡す前に相手の形態を確認してください。
登記費用は無償譲渡でもかかりますか。
かかります。所有権移転登記には登録免許税がかかり、司法書士に依頼すればその報酬も生じます。売買のような負担の慣行がないため、どちらがいくら負担するかを渡す前に取り決めておくことが大切です。
引き渡した後で不具合が見つかったら、渡した側の責任になりますか。
契約でどう定めたかによります。無償でも口約束だけだと、雨漏りや境界、残置物をめぐって後から渡した側に苦情が向かうことがあります。引き渡す状態と責任範囲を契約書に明記しておくと、こうしたトラブルを避けやすくなります。
タダで渡すより、売った方がよい場合もありますか。
あります。無償譲渡では税や登記費用が動くうえ、代金は入りません。訳あり物件でも買い取る業者に査定を取ると、想定外に値がつくことや、少額でも手取りが残ることがあります。無償譲渡を決める前に、売却の選択肢と比べることをおすすめします。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.4402(贈与税の対象)
- 国税庁 タックスアンサー No.3105 https://www.nta.go.jp/(法人への低額・無償譲渡とみなし譲渡)/所得税法59条
- 国税庁 タックスアンサー No.3202 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm (譲渡所得の計算・長期短期の区分)
- 国税庁 タックスアンサー No.3208 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm (長期譲渡所得の税率)
- 国税庁 タックスアンサー No.3211 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm (短期譲渡所得の税率)
- 国税庁 タックスアンサー No.3270 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm (相続で取得した資産の取得の時期の引き継ぎ)
- 総務省「固定資産税・都市計画税」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_11.html (標準税率1.4%・免税点)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html /負担金 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html (審査手数料14,000円・負担金原則20万円・建物ありは却下)

