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親が施設に入り、誰も住まなくなった実家。車で2時間以上かかる場所にあって、月に1回どころか年に数回しか行けない。そんな状態のまま夏を越すと、庭は膝の高さまで草が伸び、郵便受けはチラシであふれ、室内は湿気でかび臭くなります。こうした遠方の空き家を人の代わりに見回ってくれるのが空き家管理サービス(管理代行)です。総務省の調査でも、2023年時点で全国の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%と過去最高で、放置系の空き家(賃貸・売却用と別荘を除く)だけで385万6千戸にのぼります。多くの人が同じ問題を抱えています。
結論から言うと、管理サービスは月額の安さで選ぶものではありません。見るべきは「屋外だけか屋内まで入るか」「巡回の頻度」「写真付きで報告が届くか」「草刈りや緊急対応をオプションで頼めるか」「その家のエリアに対応しているか」の5点です。ダスキンのような全国チェーンから地域の不動産会社、シルバー人材センターまで担い手はさまざまで、料金の額よりも「自分の家に必要な作業が入っているか」で組み合わせを決めると失敗しません。この記事では作業内容の中身と、料金以外に比べるべき基準、そして管理を委託すべきか自分で通うべきかの分かれ目を整理します。
空き家管理サービスの作業内容|屋外だけ・屋内込み・フルの3タイプ

管理サービスと一口に言っても、作業の範囲でおおむね3つのタイプに分かれます。安いプランは敷地の外から見るだけ、標準プランは室内に入って換気や通水まで行う、といった具合に、料金の差は多くの場合「どこまで手を入れるか」の差です。まず、それぞれで何をするのかを押さえておくと、各社の見積もりを同じ物差しで比べられます。
屋外のみのプランは、外観と敷地の目視点検が中心です。塀や屋根、雨樋の破損、敷地内の雑草や不法投棄、郵便受けの状況などを見て写真を撮り、報告します。建物の鍵を預ける必要がないため、頼む側の心理的なハードルは低めです。一方で、雨漏りやカビ、給排水管のトラブルは室内に入らないと分かりません。
屋内込みのプランは、これに通風(窓を開けての換気)と通水(蛇口や便器の水を流して排水トラップの封水切れを防ぐ)が加わります。長く水を流さないと下水の臭気が室内に上がってくるため、定期的な通水は空き家の劣化を抑える基本作業です。ポスト整理、簡単な室内点検、雨漏り跡の確認までを含むのがこのタイプです。
フルサポートのプランは、巡回頻度が月1〜2回に増え、簡易清掃や庭木の状況確認、台風後の臨時点検、トラブル時の一次対応などが加わります。以下は一般的な管理サービスに多いプラン構成の例で、実際の内容や呼び名は各社で異なります。
| 項目 | 屋外のみ | 屋内込み | フルサポート |
|---|---|---|---|
| 巡回の目安 | 月1回程度 | 月1回程度 | 月1〜2回 |
| 外観・敷地の点検 | 目視・写真 | 目視・写真 | 目視・写真+簡易清掃 |
| 通風・通水 | なし | 換気・通水 | 換気・通水+念入り |
| ポスト整理 | なし | あり | あり |
| 雨漏り・カビ点検 | なし | 目視 | 重点確認 |
| 報告 | 写真付き報告 | 写真付き報告 | 詳細報告+要相談 |
| 草刈り・庭木・緊急対応 | オプション | オプション | 一部含む |
放置すると管理料の何倍もかかる|特例解除と過料の実費
「わざわざお金を払って見回ってもらう必要があるのか」と迷う方は多いです。判断材料になるのは、管理を怠ったときにどれだけの実費が発生しうるかという点です。空き家は放置すると、税金の優遇が外れ、行政からの過料(行政上の金銭罰)の対象にもなります。ここは推測ではなく、法令と国の資料で額が決まっている部分です。
まず固定資産税です。住宅が建つ土地には課税標準を軽くする住宅用地特例があり、200㎡以下の部分は課税標準が6分の1になります(標準税率は1.4%)。ところが、適切な管理が行われず「管理不全空家等」として市町村から勧告を受けると、この特例が解除され、200㎡以下の部分の課税標準は元に戻ります。金額にすると最大で6倍です。ふだん軽減で抑えられていた分がなくなるため、毎年の負担がまとまって増えます。
さらに状態が悪化して「特定空家等」に指定され、市町村長の命令に違反した場合は、50万円以下の過料の対象になります。行政からの報告を求められて応じない、または虚偽の報告をした、立入調査を拒んだといった場合も20万円以下の過料の対象です。命令に従わず行政代執行(行政が代わりに撤去などを行うこと)にまで至れば、その費用は所有者の負担になります。
つまり、管理サービスに毎月払う額と、放置して特例解除・過料・代執行費用まで発生した場合の額を並べると、後者の方がはるかに大きくなり得ます。管理は「見回りの費用」ではなく「これらの代償を避けるための保険」に近いものだと考えると、費用の性質が見えてきます。管理不全空家や特定空家の指定条件そのものは、空き家 売却の進め方とあわせて確認しておくと、管理し続けるか売るかの見当がつきます。
サービスを比較する6つの基準|料金だけで選ばない

作業内容と放置の代償を踏まえると、各社を比べるときに見るべき軸が絞れます。以下の6つを、預ける家の状態に照らして確認してください。
1. 巡回の頻度と屋内に入るか
月1回か、隔週か。屋外だけか、通風・通水まで入るか。給排水の封水切れや湿気は室内点検でしか防げないため、木造で築年数が経った家ほど屋内込みを選ぶ意味があります。
2. 報告の様式
写真付きで毎回届くか、異常があったときだけか。遠方の所有者にとって、報告は現地に行かなくても状況を把握できる唯一の手段です。写真の枚数や報告のタイミングは各社で差が出ます。
3. 対応エリア
その家の市区町村に対応しているか。全国チェーンは広く対応しますが、山間部や離島は対象外のこともあります。地域の不動産会社はエリアが限られる代わりに近さが強みです。
4. オプションの範囲
草刈り、庭木の剪定、雪下ろし、ハウスクリーニング、残置物(家に残った家財)の一時対応などを頼めるか。基本料金が安くてもオプションが割高だと総額で逆転することがあります。
5. 緊急時とトラブル対応
台風や地震のあとの臨時点検、近隣からの連絡窓口、鍵の管理体制。空き家の苦情は近隣から市町村へ入ることが多いため、連絡を受け止める窓口があると安心です。
6. 契約期間と解約条件
最低契約期間、解約時の違約金の有無。売却が決まれば管理は不要になるので、途中でやめやすい契約かどうかも確認します。各社の正確な料金と作業内容は、必ず公式サイトの最新の記載で確かめてください。
ダスキンなど大手と地域業者・シルバー人材センターの使い分け
担い手は大きく3系統あります。ダスキンのような全国展開の大手、地域の不動産会社や管理会社、そして自治体のシルバー人材センターです。どれが正解というより、家の場所と頼みたい作業で使い分けるのが現実的です。
全国チェーンの強みは、対応エリアの広さと報告様式の統一、問い合わせ窓口の分かりやすさです。離れた家でも同じ品質で見てもらいやすく、初めて管理を頼む人には入り口として選びやすいでしょう。
地域の不動産会社は、その土地の事情に詳しく、いざ売却や賃貸に切り替えるときにそのまま相談できるのが利点です。管理を任せながら「そろそろ売ろうか」という判断もしやすくなります。シルバー人材センターは草刈りや簡単な見回りといった単発作業を比較的手頃に頼める傾向がありますが、室内点検や写真報告の様式は専門業者ほど整っていないことが多いので、求める作業に合うかを確かめてから使い分けます。
自分で管理するか委託するかの判断フロー

委託が向く人と、自分で通える人がいます。以下の条件を上から順に見て、当てはまる方へ進んでください。
- 家まで片道1時間以内で、月1回以上通えるか。通えるなら、換気・通水・草の状況確認・ポスト整理を自分で行えば当面の劣化は抑えられます。ここで無理なら次へ。
- 近隣とやり取りできる知人や親族が近くにいるか。いるなら、その人に一次確認を頼み、点検だけ業者に頼む折衷案が取れます。いなければ委託寄りです。
- 相続放棄をした家か。相続放棄をしても、放棄の時にその家を現に占有しているときは、相続人などに引き渡すまで自分の財産と同じ注意で保存する義務が残ります(民法940条、2023年改正)。占有している場合は、放置せず管理の手当てが必要です。
- 今後その家を使う予定があるか。使う予定がなく、維持費だけがかかるなら、管理を続けるより売却を検討した方が総額を抑えられることがあります。
4番目に当てはまるなら、管理料を払い続ける前に、いくらで売れそうかを先に把握しておくと判断が早まります。複数の不動産会社にまとめて査定を依頼できるサービスを使えば、手放す場合の目安がつかめます。
よくある質問
空き家管理サービスの料金はどれくらいですか
屋外だけか屋内まで入るか、巡回の頻度、対応エリア、オプションの有無で幅があります。基本料金だけでなく、草刈りなどオプションを含めた総額で比べるのが実際的です。正確な額は各社の公式サイトで内訳を確認してください。
ダスキンでも空き家管理を頼めますか
全国展開の大手でも空き家の見回りや点検を扱う会社があり、対応エリアの広さと報告様式の統一が強みです。料金と作業内容、屋内に入るかどうかはサービスによって異なるので、公式サイトの最新の記載で確認したうえで、本文の6基準に当てはめて比べてください。
シルバー人材センターと専門業者はどちらがよいですか
草刈りや簡単な見回りといった単発作業は、シルバー人材センターを手頃に使えることが多いです。一方、室内の通風・通水や写真付きの報告、緊急時の窓口までまとめて任せたいなら専門業者が向きます。求める作業の範囲で使い分けるのがよいでしょう。
遠方に住んでいても頼めますか
対応エリア内であれば、遠方の所有者が離れた家の管理を委託できます。写真付きの報告が届くサービスを選べば、現地に行かなくても状況を把握できます。契約時に対応エリアと報告方法を確認してください。
相続放棄した家でも管理は必要ですか
相続放棄をしても、放棄の時にその家を現に占有しているときは、引き渡すまで自分の財産と同じ注意で保存する義務が残ります(民法940条、2023年改正)。占有している場合は放置せず、必要に応じて管理の手当てをしておく方が安全です。
管理を怠ると本当に固定資産税が上がるのですか
住宅が建つ土地は住宅用地特例で200㎡以下の部分の課税標準が6分の1に軽減されています(標準税率1.4%)。管理不全空家として勧告を受けると、この特例が解除され課税標準が元に戻ります(最大6倍)。さらに特定空家の命令違反は50万円以下、報告拒否などは20万円以下の過料の対象です。
火災保険や電気・水道はどうすればよいですか
管理サービスとは別に、保険の継続や電気・水道を止めるかどうかの判断が必要です。これらは別の記事で詳しく扱っています。管理を委託する場合も、契約や解約の手続きは所有者側で確認しておいてください。
参考・出典
- 総務省 令和5年住宅・土地統計調査(確報集計)結果 概要 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(第2条・第13条・第22条・第30条/e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127
- 国土交通省 改正空家法の概要(令和5年改正) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621960.pdf
- 総務省 固定資産税・都市計画税 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_11.html
- 民法 第940条(相続の放棄をした者の義務/e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 法務省 民法等の一部を改正する法律(相続放棄者の管理義務の見直し等) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00499.html

